りたーんず
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仲間がいればどんな困難にも立ち向かえる。…けれども、いつかは一人きりで困難に立ち向かわねばならない時が必ず訪れる。
それも、意外とすぐに…
現実で目を閉じれば、グレゴリーハウスで目を覚ます。…いつも通りの目覚めだが、今日はちょっと違う。
昨夜、ベッドも無く、ろくに眠れそうにない冷たい牢屋に戻るよりは、狭いけれど一緒にベッドで寝れば温かいからよく眠れるだろうと思いネコゾンビに泊まっていくように提案してみたのだ。ネコゾンビは少し迷ったあと、喜んで頷いた。何やら言いたげにしていたグレゴリーさんにもちゃんと許可をとってあるし!
これでネコゾンビがよく眠れたなら、いずれ専用のベッドを作ってあげようと決意しつつ、僕は隣を振り返った。
「おはようネコゾンビ!よく眠れたかい?」
「…お腹空いたニャお腹空いたニャ…でもボーイを起こしちゃいけないニャァア…」
お腹が鳴らないように両手で押さえつけ…涙目でシーツをかじっているネコゾンビの姿に、僕は思わず涙した。
「あれ?ボーイ起きたのかニャ?おはようニャおかげでよく眠れ」
「…ごめんよネコゾンビッ!!」
…ある意味、鎖で繋がれるよりも脱出出来なかった…と後にネコゾンビは語る。
僕がネコゾンビにひたすら頭を下げていると、不意に部屋の扉がノックされた。
「おはようボーイあーんどネコゾンビ!よく眠れたー…わけじゃなさそーねー?そのクマは」
廊下から聞こえてきた元気な声の主はガールだ。鍵穴から見える瞳が苦笑のためか細められた。
「ああ、おはようガール。ごめん今開けるよ!」
今日こそは次の仲直りのための作戦を考えようと約束していたのを思いだし、鍵を開けようと駆け寄った僕の耳に馴染みのある音が聞こえた。ネコゾンビの部屋の…重い鉄扉の開く音が。
「開けちゃダメニャ!ガール!逃げるニャ!」
鍵を持った手は険しい表情をしたネコゾンビに掴まれて止まった。
そうだ。ネコゾンビはここにいる。
だけどそれなら一体、牢屋にいたのは誰なのか…?
「誰っ!?きゃあッ!!」
「ガール!?何が起きたんだ…ガール大丈夫!?」
扉の向こうから返ってきたのは、ガールの声ではなかった。
「無駄よ!観念して出てきなさい!この卑怯者!!」
「その声は…カクタスガールニャ!?」
カクタスガール…カクタスガンマンの妹だが、彼女は兄と違って外さない縄投げの名人だ。前回の滞在の時も兄の勘違いを真に受けた彼女に追い回され、何回も危ない目に遇わされたが…。
「待ち伏せも充分卑怯だと思うけれど…どうして君がガールが帰ってきたことを知っているニャ?」
情報源についてネコゾンビが探りをいれてくれたが、僕は頭を抱えて途方にくれるしかなかった。
「一昨日の夜!兄ちゃんが帰ってこないからホテル中探してたら…この女の部屋の前で兄ちゃんが倒れてたからよ!男同士の決闘なのに…兄ちゃんをキャサリンに襲わせるなんて最低!この卑怯者!!」
「…そうなのかニャ?」
「いや…うん。決闘じゃなかったけど成り行きで………そういえばガンマンのこと、すっかり忘れてた…」
あの日は二人ともネコゾンビのことで頭がいっぱいだったからなぁ…としみじみと呟いた言葉に、カクタスガールの機嫌はますます悪くなる。
「よくもそんな嘘を言えるわね!ふん…いいわ!それなら今度こそ、この女を賭けて兄ちゃんと正々堂々勝負しなさい!明日の正午、荒野の部屋で待つ!この女はそれまで人質よ!」
ズルズルと廊下を引き摺る音が遠ざかっていく。慌てて廊下を覗くと、ロープで簀巻きにされたガールがカクタスガールに引っ張られて廊下を消えていった。
「…ガール…ごめんニャ。必ず助けにいくニャ!」
「…ガール………頼むからドナドナは歌わないで…」
ネコゾンビの心配をよそに小さく聞こえてきた呑気な鼻歌に、僕にはどうしてもガールが…楽しんでいるように思えてならなかった。
こうして、いまいち緊張感のないまま…ガールがさらわれた。
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カクタスガールちゃんマジお花!
というわけで次回からはカクタス兄妹編攻略開始!しかしぶっちゃけボーイ達は忘れていたわけですが…ネコゾンビ編から放置されてたガンマンのことを覚えていた人どのくらいいますかね…?
さて本人二人をよそに、スピーディに決闘することが決定されてしまいました!ボーイは果たしてガールを賭けてガンマンと決闘しちゃうのかどうか…。
次回、「さらわれたガール〜そもそも決闘の準備って何が必要なの?〜」(予定)です。
お楽しみに!