りたーんず

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一つの問題に取り掛かっている時には、なおさら周りに目を配るべきなのだ…。
目を逸らした瞬間に、事態は悪化するのだから。



「ミイラパパの代わりに、パブリックフォンを捕まえるだって!?」

キャサリンに一通りの説明を受けたボクは、驚いて聞き返した。

とりあえずミイラパパからのホラーショーを免れたため、場所をガールの部屋に移し、ボク達は今後の事について相談していた。といっても、シェフはちょっと顔を出してすぐ、急いで晩御飯の準備に行ってしまったので、ボクとキャサリンとガールだけだ。

キッチンに向かうシェフに、忙しそうだね!と言ったらなぜか睨まれた。…ボク、何かしたかな?
ちなみに、ボーイは『不良品なら直せるかもしれない』と、ミイラパパの部屋で修理を行っている。…上手く直ればいいけど。

でも、今の問題はガールとミイラパパとの約束の内容だ。

「難しいと思うなー…あの変装、ボクだって完璧には見破れないもん…」
「あら、そうなの?仮にも真実の天秤なのに情けないわねぇ〜」

キャサリンの言葉に少しむっとしながらボクは仕方ないんだ、と続けた。

「真実の天秤は『行動の真偽』しか計らない。相手の『正体』を暴くことは出来ないんだよ」

その説明にキャサリンの顔色が少し心配そうに曇る。

「大丈夫よキャサリン!無理かどうかは私が決めるわ!それに…最初から審判を頼みにはしてないもの!!」
「あらあら…頼もしいわねぇ♪」

ガールが笑顔で告げた言葉にキャサリンの顔からは不安げな色は消えた…が、ボクは複雑な気分で胸を押さえた。

「ボーイ…頼むから早く帰って来て…」

誰一人ツッコミとフォロー役のいないこの部屋で、プライドをずたずたにされた審判は泣きそうな目で呟いた。



一方、その頃…ミイラ坊やは考えていた。

自分は晩御飯のあと、ちゃんとお薬を飲んだ。
でも、父ちゃんはお薬を飲んでない。お薬がもうないから。

でもやっぱり父ちゃんは倒れちゃった。…ジェームスのおじいちゃんが部屋まで運んでくれたけど、お薬はくれなかった。

それに『こうばい』のお薬はあんまり効かない。やっぱり『いむしつ』のむらさきのお薬が一番いい。

でもあのお薬は『しんさつ』しないともらえない『キチョウなゲキヤク』だから、キャサリンおばちゃんにもらうしかない。でも父ちゃんは「診察を受けるお金がない」って言ってた。キャサリンおばちゃんは「診察料でグレゴリーがうるさく言ったら採血してやるから」って言ってたけど、父ちゃんは首を横に振っていた。


あのお薬なら父ちゃんもすぐによくなるのに…。

どうしたら『しんさつ』しないで、あのお薬が手に入るだろう…とうんうん唸りながら考えていたミイラ坊やにふと名案が浮かんだ。


キャサリンおばちゃんに『しんさつ』してもらった人に、分けてもらえばいいんだ!!


自分のアイデアにウキウキしながら、ミイラ坊やは階段を目指して走りだした。

「ノックって何回だろ〜…三回かな?」


自分達の他にキャサリンの診察を受けている住人…2階の『カクタスガンマン』の部屋を目指して。


「いっぱい持ってたら、あの二人にも分けてあげられるかな〜?」




−−−−−−−−−−−
27夜です。ミイラ親子編です。しかしなんというフラグ。そういえば口止めし忘れたね!

ジェームスかと思うはずの場面で、まさかのダークホース。にしてみました。

キャサリンは診察と処方をしますが雇われナースなので、診察料とお薬代はそのままオーナーのグレゴリー(守銭奴)の収益にります。結果、お金がないと診察を受けられない。という図になります。うーん、シビア。


そんなわけで次回は、ミイラ坊やの優しさに、全ボーイが泣く…?



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