りたーんず

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運命というものがあるならば、それはどのようにやってくるものだろうか…。
ある日、突然出会うものなのか。それとも明日の陽のように静かに近づいてくるものなのだろうか。
いずれにせよそれは…嵐のようにすべてを巻きこむものなのだろう…。



見つかってしまった…決して見つかるべきではなかったのに…!!


僕達と目の合ったミイラ坊やの動きは早かった。ズボンのポケットから取り出した白い塊を僕とガールに投げつける。
顔に当たるのを避けようと腕で庇った事が裏目に出た…投げられた白い『包帯』に僕達は腕を絡め取られる。
当然のごとく伸びた包帯の先はミイラ坊やの手の中にある。

「わぁーーーい!みてみて父ちゃーーーん!!!」

小さな子どもの体のどこにそんな力があるのかと問いたいような力強さで、僕たちは引きずられていく。廊下へ…そして、向かい側の部屋へと…。

「うわぁあああーーー!!」
「きゃーーーーーーッ!!」
「ちょっと!まちなさぁ〜い!!」
「ボクも行こーッと!!ごちそうさまー!!」


キャサリンとジェームスが引きずられていくボーイ達を追いかけていき、部屋にはグレゴリーと審判小僧が残された。

「…どういうことかなグレゴリー?」
「…何がじゃ?」
「この部屋に彼らがいるって知っていて、君がミイラ坊やを連れてきた事さ」

怒りを隠そうともしない審判の言葉を、迂闊にも軽々しくドアを開けたのはキャサリンだろうとグレゴリーは一蹴した。

「ワシはちゃんと『キャサリンに仕事だ』と言ったぞ。キャサリンの仕事ならば、患者がついてきとるのは当たり前じゃろうが」
「嘘だッ!!!」

審判が叫ぶと同時に、がちゃん!と音がした。足元でハートが粉々に割れている。

「はい、カックン!…真実の天秤を前に嘘をつこうなんて浅はかな考えだよ、グレゴリー。君はわざとミイラ坊やを連れて来た。彼らを試すために…彼らがこのホテルをどこに導くつもりなのかを知るために…」
「ならば…どうだというのだ?そもそもワシはあやつらの味方になったつもりなどない。お前こそどうなのだ…何故あやつらに手を貸す?その真実の天秤とやらはあやつらの未来の何を教えてくれた?」

せせら笑うグレゴリーの言葉に審判小僧は、ぐッと言葉に詰まる。

「わからない…動かないんだ…彼らが戻って来てから、未来をジャッジ出来ない…。こんな事、今までなかったのに…」

審判が苦々しく告げた言葉を、グレゴリーは無表情で聞いていた。興味を失ったかのようにくるりと背中を向け、扉に手をかける。

「ふん、きっと未熟者のイカサマ天秤が壊れただけじゃろうよ?お前は気になっているのだろうがな…未来は変わらぬよ。…永遠にな…」

吐き捨てるようにグレゴリーは言い、するりと廊下の闇に消えた。


「…火を足してから出ていけぇえええ〜…」
「あ、大変だよ!シェフが消えそう!!」

瀕死の料理人に審判が生肉ケーキのキャンドルを点ける。シェフはじっとそれを見ていた。

「ジャッジ…できなくなったのか…」
「ああ、いや…なんでだか分からないけど未来だけが分からなくなってさ!すぐに戻るとは思うんだけどね。ちょっと気になっただけさ」

悔しいけど…ボクやっぱり半人前だしね!と笑う審判にシェフはそうか、と頷いて審判の腕を取り、くるりと体を反転させる。
シェフに向ける格好になった審判の背を、とんと軽く押した。

「…じゃあ見にいけ」
「へ?」
「気になるんだろう?未来は、いずれ向こうから来る…だから今は、アイツらを見にいけ」

特に料理の悪口を言ってないかを特に、とぐいぐい背中を押すシェフに、審判は小さくうなずくと、いつもの笑顔で飛び出していった。

「しょうがないなぁ…じゃあ行ってくるよ!シェフ、あとはよろしくね!」
「…行って来い」

突っ伏したままひらひらとおざなりに片手を振る。審判が出ていき、次第に頭の灯火も大きくなってきて、ようやく動けるようになったシェフは顔をあげた。

せっかく少しは静かな奴になるかもしれなかったが、まぁいい…。
柄にもないことをしたが…火の礼だ。
どうせ欲望に忠実な者しかいないこのホテルで何をためらうことがあるのだろう。
見たいなら知りたいなら、行けばいいのだ。


その時、ふと周りの惨状が目に入った。

飲み残しのジュースに空き缶。お菓子の袋。散乱したラードと生肉。こぼれて床を染めるワイン。焦げて血まみれの天井…しかも垂れてくる。

あとはよろしく!と出て行った部屋の主。


やりたくないが、自分がやらなかったら確実にしばらくそのままになるので、それよりは自分がやった方がマシだと思った場合は…どちらがよいのだろうか…。

シェフはため息をつくと立ち上がった。
手始めに…モップを探しに。


そしてその日、シェフは夕飯の仕込みギリギリまで掃除する運命にあった…。



――――――――――
主役が引きずられていってしまったのでグレゴリーさんと審判の会話のターン。

ようやく審判が渦中に飛び込んで行きましたね!これからどうなるかも知らないで(笑)
シェフは多分きれい好きか神経質なタイプだと思います。対して審判はずぼらです。暗い部分やロフトに私物をため込んで整理しません。たぶん部屋に帰って第一声「アレっ!?ものすごくきれいになってる!!もしかして妖精さん!?」でシェフをブチ切れさせます。

今回は周りの思惑にスポットを当てましたが、次回はきちんと攻略スタートしますよ!
ちなみにヒントは###グレゴリーが5時をお知らせいたします…###です!!おや時報がかぶってしまいましたね!まぁ未来は近づいてくるから2度めは言わなくていいや。大事じゃないし。ではまた次回!



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