りたーんず
□14
1ページ/1ページ
異常な日常を永遠に繰り返すこの世界に起きた『変化』は異常なのか?それとも…また『異常という日常』の一部にすぎないのか?
…さぁ、君ならどうする?
理由の分からないお説教の後でボーイがしてくれた説明によると、ボーイ達が帰ってきたきっかけには『死神さん』という人がいて…さらにその『死神さん』の話によれば、魂のカケラをグレゴリーに吸収された二人は、グレゴリーと似たような力を手に入れたらしい。
グレゴリーがこの世界からホテルを作り上げたように、彼らは『ホテルからモノを作り出す』事が出来るようになったんだとか…正直、ボーイの話は難しくてよくわからない。
「うーん…いまいちピンとこないよー」
「大丈夫よ!私もよく分からないから!!」
「ガール…アナタは分かってあげてた方がよかったんじゃな〜い?」
ボク達が首を傾げているのを見て、ボーイが肩をすくめて言った。
「…実際にやってみようか…」
そしてボク達は真夜中の中庭にやって来た。幸い、ロビーにもキッチンにもシェフの姿は見えなかった。…バーか自室にでもいるのだろう。なんにせよ、中庭に出るためにはとても都合がよかった。
…グレゴリーさえロビーにいなかったら。
「おやおや…こんな夜更けに中庭でいったい何をなされるんです?」
その底知れない目を見たって真意は分からないが、好奇心を隠そうともしないでボク達に付きまとってくる姿は、とても彼の孫…ジェームスに似ていた。
もっともグレゴリーよりジェームスの方が断然、可愛さと厄介さが上だけど…。
「グレゴリーもさっさと寝ればいいのに…年寄りの冷や水だよー?」
「余計なお世話だ!…審判小僧…お前、もしや分かってて言っているんじゃないのか?」
「え?夜遅くまで起きているお年寄りには冷や水をかけると健康にいいって事でしょ?」
そう言ってボクは庭に置いて(放り出して)あったジョーロと水鉄砲を手に持ちグレゴリーに詰め寄った。グレゴリーがじりじりと後ずさる。
「…あのー…始めていいですか?」
「どうぞどうぞ!近くで見せていただいてよろしいですかな?」
タイミングよくツッコミを入れたボーイの後ろにグレゴリーがさっと隠れる。…チェッ。ボーイを盾にするなんてやっぱりグレゴリーは卑怯だ。
ジョーロを地面に置き…水鉄砲は多分ジェームスのモノだろうから明日にでもジェームスに返そう、とポケットにしまい、ボクも見物させてもらう事にした。
ボーイはまずハーブ畑の植え込みの一部に穴を掘り、ゴミ捨て場から取り出した空き缶を4、5本くらいその穴に埋めた。
「…これで多分準備はいいかな…ところで…この中で誰か、シェフが貰って喜びそうな物知ってる人いますか?」
ボーイの突然の質問に全員が首を傾げる。
「えー?やっぱり料理じゃない?」
「ボクもそう思う。というよりも、それしか思いつかないよねー」
ガールの意見にボクも頷く。あのシェフが料理以外に喜びそうな物なんて思いつかない。
その時、キャサリンがなぜか不機嫌そうな顔でボソッと呟いた。
「………あの人、他人の作った料理は食べないわよ」
「え、そうなの?」
「いや、ボクも知らない!すごいなー!なんでキャサリンそんなこと知ってるんだい?」
驚いているボク達にグレゴリーがニヤリと笑って口を開きかけた時、キャサリンの注射器が暗闇でギラリと光った。
「別に…ただの女のカンよ…」
しっかりとグレゴリーを睨みつけながら言うキャサリン。グレゴリーが青ざめて開きかけた口を閉じる。…これは触れない方がよさそうだ。
「…うーん…僕もできれば生モノ以外がいいんだけどなぁ…料理以外で何かないかな?」
話題の方向を変えるようにボーイが言った言葉に皆、揃って頷く。
「そうだね止めよう!料理はナシ!何かないかなぁ!?」
「じゃあ………キッチン用品とかどうかしら!?お鍋とかそうゆう!」
「ああ、それならいいかも…じゃあ」
ボーイが頷いて空き缶を埋めた場所の土を掘り返す。
「あっ!」
「…ほぅ」
ボク達は驚いた。あのグレゴリーでさえ、その目を少し見開いて…。
なぜなら、埋められた空き缶の代わりに、土の中から変わった形の両手鍋が出てきたからだ。
「…中華鍋…とかでどうでしょう?」
ボーイがそういってニッコリと笑った。
「多分…この世界には存在しない物だと思うんですけど…?」
−−−−−−−−−−−
はい!また怒られそうな設定ですねー…ナンダコレです!
常々、某動画サイトで「〇〇が幻●郷入り」とかを目にするたびに「これGHSでもイケんじゃね!?」とか思ってたんです…。はいまぁそんなわけで今回、中華鍋がGHS入りです!
果たしてシェフは許してくれるんでしょうか…?
キャサリンのカンの真実については…まぁ…4部参照という事で。
とりあえず、審判が落ち着きなく動きすぎで進みが遅くなりますが詳しい説明も含めて…。
また次回!