りたーんず

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…一つの問題が解決したら、次には大問題が待ち構えていた…。
…そんな時、僕に出来る事とはいったいなんだろうか…






一晩かかってようやくできたキャサリンとの和解…だけど次に待ち構えていたのは、よりにもよって『あの人物』との仲直りだった…。


「…なんでキャサリンの次がシェフなのよ〜!?絶対イヤ!ミンチはイヤよぉ〜ッ!!」

ガールが泣きそうな顔で悲嘆にくれた。

…前回、タマシイ集めの際にシェフに追いかけ回されたのが相当トラウマになっているようだ。

追いかけられた事がある点では僕も同じ意見だが…彼女は料理に悪戯をして見つかり、追いかけ回された過去があるので僕の比ではないだろう。

…若干自業自得だったが…結果としてシェフの持つタマシイを手に入れる事が出来たのは運がよかったかもしれない。そのくらい難攻不落の住人なのだ…なのに。

「ゴメンゴメン!二人の事言っちゃいけないって特別ジャッジの事もだったんだね〜…つい自慢したくなっちゃって!シェフにも言っちゃいけなかったの?なぁんだ…それならそうと先に言ってくれればよかったのに!」

審判小僧が逆さまのまま笑顔で言ったセリフに、ガールが拳を固めた。…残念な事にキャサリンがガールの腕を捕まえて宥める。

「キャサリン放して!コイツ殴れない!」
「あらダメよ〜…殴っても、言っちゃったことは戻らないんだから…それに殴ったって効果ゼロよ?許してあげてねぇ…この子、これでも悪気はないのよ?…余計タチが悪いんだけど」

キャサリンの言葉を遮るように審判小僧が、あ!と声をあげた。

「二人とも立たない方がいいよ!パンツ見えてる」

二人が慌ててスカートを押さえる。…この時、僕は改めて彼が「一言多い」人種であると認識した。

僕は無言で審判小僧の吊り椅子の向きを反転させた。審判小僧が感嘆の声をあげる。

「あ!そっかぁ!ボクを反対にすればいいのか!さてはボーイ…頭いいね!?」
「…君は少し黙っていた方がいいよ」

背後からの羞恥と殺意と怒りのオーラで真っ赤に照らされた部屋の壁を見ながら、僕は審判小僧を押さえた。その手が震えていたのは…決して恐ろしさだけではない…。

内心ではその人に対して怒っていても、それが見捨ててよい理由にはならないのだ…たとえどんなにムカついていても。


部屋の中が徐々に正常な色合いに戻ったところで、僕は振り返った。
キャサリンとガールはぐったりと腰掛けていた。…どうやら、無罪判決とまではいかないまでも執行猶予はついたらしい。

「…なんか…イヤになってきた…」
「アタシも…疲れたわぁ…もうお開きにしましょう?アタシもいい加減眠りたいのよねぇ…」
「さんせーい…」

根こそぎ気力を奪われたような二人がダルそうに呟く。

「…でもシェフが誰かに言ったら」
「大丈夫じゃない?あの人…無口だし?言い触らすような事はしないデショ…」
「そうそう!大丈夫!!」

僕の心配にキャサリンが面倒くさそうに答える。審判小僧も逆さまのまま頷いた。

「シェフはボクの友達だし、スッゴくいい奴だから大丈夫!勿論、ちゃんとボクからも口止めしておくよ!!」

「どうしよう…一気に不安になった…」
「…でも、他に方法なんてないわよ?審判に任せましょう…心配だけど…」

ガールの言葉に説得される形で、この日はお開きになった。

自分の部屋に戻ってベッドに潜り込む。色んな事がありすぎて、なんだかひどく疲れた気がする。

…しかし、審判小僧にシェフの相手が出来るんだろうか…余計話を拗らせるんじゃないだろうか…そして、キャサリンの手により審判小僧の椅子にひっかけられて廊下を引きずられていった、気絶したままのグレゴリーさんは大丈夫だったんだろうか…などと考えながら、僕は目を閉じた。






そして僕は現実のベッドで目を覚ました。
…あちらのベッドで眠ると、現実で目が覚める…死神さんの言った事は正しかったわけだ。

しかし…全然休んだ気がしなかった。何より今晩、眠る時を考えて…僕は深くため息をついた。


これじゃあ、ふて寝も出来やしない…。

僕は再度ため息をついた。…ため息だけは…自由につけることに安堵しながら…。





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えぇ、これで一晩です。イロイロありすぎて何がなんだか…ナンダコレです!!

さて次回からはシェフ編本格始動!久々にあの人が戻ってきます。

あとボーイ好きな方には悲しいお知らせですが、今回でボーイの視点が一旦最後になります。まぁ次回もチョロっとは入りますが。

ヒントはジャッジの恩返し。モロバレですけど?それではまた次回。



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