りたーんず

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何かをやる前には、大事な事をあらかじめ確認しておくべきだ…
…本当に大事な事は、意外と伝わっていない事が多いのだから…





キャサリンの部屋で正座しながら、僕は後悔していた。

僕の左横ではキャサリンから真っ当な手当てを受けたガールが椅子に腰掛けている。

僕の目の前では、ベッドに腰掛け腕組みをしたキャサリンがお説教を続けていた。

「だいたいねぇ…アタシもそこまで怒っちゃいなかったのよ…?あんなタマシイとか…バナナの皮の事ぐらいで!!」
「…でも採血しようとしたよね?」

ガールが口を挟み、キャサリンが吠える。

「アタシを怒らせた段階で採血は決定なのよ!!でもねぇ…アタシが何より怒ってるのは、女の子が『殴られるから許してくれ』なんて言うのを黙って見てる男共よ!!本ッ当に情けないわねッ!!」

「本当にごめんなさい…」

ビシリと指を指されて僕達は頭を下げた。
僕の右隣で正座させられているグレゴリーさんが小声でブツブツと文句を言う。

「…なぜワシまで怒られる羽目に…」
「キャサリン〜頭に血がのぼるよー」

審判小僧だけはキャサリンの手によって吊り椅子から逆さ吊りにされていた。

「吸われたくなかったら黙ってなさい審判!…だいたい最初からねぇ〜…話し合いの仲介を審判小僧に頼む時点で間違ってるのよ!あの子ジャッジのためには目的を選ばないんだから!」
「痛いほど身に染みました…」

「どこをどう間違えたら話し合いが殴り合いに変わるのよ!」
「おっしゃる通りです…」

なぜこんな事になったのかは僕にも分からない…本当に。

「そうだ!お前が悪いのだぞ審判小僧!!あの試合は一体なんなのだ!!」

グレゴリーさんがキャサリンの言葉に乗っかり、審判小僧を責める。


「勝敗がつかないどころか、攻撃は一方的…何より、キャサリンはいいとしても…相手選手にちっともセクシーさがないとはどういうことだ!金を返せ!金を…おうッ!!」


言い終わらないうちに、グレゴリーさんがすごいスピードでふっ飛んで壁にぶつかった。振り返るとそこには思い切り拳を振り上げた姿のガールが立っていた。
…どうやらかなり強烈なアッパーが繰り出されたらしい…なにより、ガールの目が据わっているのが恐い。

審判小僧がガールの素早さに感嘆の声を上げる。

「本当に殴り合わなくてよかったね!キャサリン負けてたかも」
「アンタも吸われたくないなら黙んなさい」

そういってキャサリンが倒れたグレゴリーさんに歩みより、注射器を振り上げる。

「…下らない事言ってんじゃないわよ!」

ヂュウウウ…という音に、僕はそっと目をそらした。

「…もういいわ…ボーイちゃんもワザとこの子に戦わせたわけじゃないし…ちゃんと謝ってもらったわけだし、アタシもそろそろ眠りたいし…許してアゲルわ…」
「ほんと!?キャサリン!!」
「えぇ、採血もしたしね」

嬉しそうな声で言う二人…二人ともちょっとツヤツヤしている。…これも一種のホラーショーだろうか?

しかし、今のうちにキャサリンに伝えておく事を言っておいた方がいいだろう。

「あの…キャサリン。一つお願いがあるんだけど…僕達が帰ってきた事をまだ誰にも言わないでくれないかな?」

今の時点では、僕達が帰ってきた事を知っているのはキャサリンだけだ。
今回の僕達の目的は『皆に謝る』事なので、キャサリンもあまり言い触らす気はないようだが…前回…タマシイを集めた時みたいに、噂が広まったら大変厄介な事になる。


「キャサリンお願い!」

ガールの言葉に、キャサリンは仕方ないわねぇ…とガールの頭を撫でながら、頷いた。

「…それくらい構わないけど…」
「…けど?」
「…そっちの子は、いーワケ?」

キャサリンが僕の後ろを指す。…嫌な予感がする。

♪〜♪♪〜♪〜〜ピッ!

僕達が振り返ると、聞き覚えのある電子音がして、逆さまの審判小僧がケータイを耳に当てた。

…この世界にも携帯電話ってあったんだ…いやそれより、やっぱり着メロまで審判小僧の歌なんだ…と僕がツッコミどころに気を取られているうちに、審判小僧は笑顔で爆弾発言をした。

「あ、もしもしシェフ?出るの遅いよ三回もかけちゃったじゃん。え?夜中に電話して来るな?寝てた?うんうん。そんな事より今日スッゴくいい事したんだよ!ボーイとガールが帰ってきて、いきなりキャサリンとの特別ジャッジを頼まれてさ〜…ふぐッ!!」

僕が声にならない叫びとともに審判小僧の口を力いっぱい押さえている間に、ガールが審判小僧の手からケータイを奪い取った。

ガールが蒼い顔で電源ボタンを連打している。…とても空しい行いだけど、気持ちはよくわかる。

「ぷは!…いきなり何するのさボーイ!!」

勢い余って鼻まで塞いでしまったため、審判小僧が非難の目を向けてきたが、それどころではない。

何するんだはこっちのセリフだ………よりによって、一番最悪な人物に!!

僕は審判の肩を掴んだ。

「君は…」

僕が息を吸い込んだのを見て、ガールとキャサリンがさっと耳を押さえる。


「…さっきまでの会話の何を聞いてたんだーーーーーーッ!?」

本当に…大事な話ほど…聞いていない者が多い。






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ようやくキャサリン編終了!と同時にシェフ編突入!超展開だよナンダコレです。

うちの審判小僧は唯一ボーイを叫ばせる事が出来る人物です。逆に考えるんだ…ボーイも叫ばざるを得ない人物なんだ…

シーズン4見るとキャサリンもケータイ持ってるし、グレゴリーハウスの世界ではケータイがあるんですね。あれ…公衆電話…?
まぁもし審判がケータイを持っていたら着メロはあの曲なんだろうなと。

さて次回からはシェフ編です!!…ようやく二人目かよとか言わないで…次回もよろしくお願いします!!


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