りたーんず
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…たとえどんな相手だとしても…きちんと話せば分かってもらえる…僕はそう思っていた…。
だけど、そんな事は意外と少ないのかもしれない…。
「そういえばグレゴリーさん、キャサリンに薬貰いに行ったんじゃなかったの?」
「………自室に薬があったのを思い出しましたのでわざわざ採…診察されに行くこともないかと。」
…起こせばとばっちりで恐ろしい目にあうのが分かりきっているからか…グレゴリーさんは倒れているキャサリンを一目見て見ないふりをした。…視線をそらした先で審判小僧と目が合ってしまったのは予想外だったようだが。
「やぁ…グレゴリー!僕にジャッジを受けにきたのかい?」
「ええい誰がそんなモノを頼むか!…カオスを感じて来てみれば…何故お前がおるのだ…?」
「そんなモノだって!?…グレゴリー、君にはジャッジの素晴らしさがまだ分からないのかい?」
「ふん!素晴らしいも何も…お前がわざと動かしとるだけじゃろうが!」
「やっぱり…ッ!あのひどい噂は君が流してたのかい!!」
「噂も何も真実じゃろうが!!」
グレゴリーさんと審判小僧は仲があまり良くないのだろうかと気にはなったが…今のうちに、僕はガールにこっそり耳打ちした。
「ガール…これってチャンスじゃないかな?」
「…チャンス?」
僕は頷く。
「…今はどうにかキャサリンを倒せたけど、今度はキャサリンも用心してくると思う…だからキャサリンとは今日のうちに話をつけなきゃいけない…」
「でも、このままキャサリンが起きたら採血されるのは間違いないんじゃない?…あ!」
僕の言いたい事が分かったのか…ガールの目が輝いた。
そう…キャサリンのホラーショーは『採血』…あの大きな注射器がなければ成り立たない。
しかし、ガールの表情はすぐに曇ってしまった。
「…でも…注射器を盗んだら、余計怒るんじゃない?…それに、キャサリンは部屋にもいっぱい注射器持ってるみたいだし…」
「…だから、逆だよガール…注射器をキャサリンから離すんじゃなくて、キャサリンを注射器から離すんだ…」
「えぇー?一体どうやって?」
首を傾げるガールに、僕は笑った。
「…第三者に頼むんだ…審判小僧とかね………でも、難しいだろうな…」
何たって相手はキャサリンだ。審判小僧がそう簡単に協力してくれるとは思えない。
「あらそんなの簡単じゃない!」
「え?」
ガールが明るく笑って、ねぇ審判小僧!と呼びかける。
「何だいガール?ジャッジするかい?」
突然名前を呼ばれて、グレゴリーさんと手の平をあわせて力比べをしていた審判小僧が振り返った。
…審判小僧の手が外れた事でバランスを崩したグレゴリーさんが背後で転んでいたが、僕はツッコまない。
「…実は…アナタに頼みたい事があるんだけどいいかしら?」
「なんだい?」
「…実はね…私達、キャサリンに謝らなきゃいけないの…できれば話し合いで解決したいから、アナタにも同席して欲しいんだけど…ダメ?」
ガールのセリフに、審判小僧の顔色がさぁーーーッと音を立てて蒼くなる。
「………それはちょっとムリかも…だって、相手はキャサリンでしょ?ムリムリムリ絶対ムリ」
首を横に振りながら後ずさる審判小僧。
「それにホラ!僕ジャッジの時間だから!!」
じゃあね!と吊り椅子に飛び乗る審判小僧にガールはあからさまにため息をついた。
「…そう…やっぱりダメね…残念だけど仕方ないな…巻き込むような事言ってゴメンなさい…」
「ううんいや本当に力になれなくってゴメンネ!僕も何かと忙しいからさぁ!」
不必要な程明るい笑顔で審判小僧が謝ってくるが、吊り椅子の揺れ具合が今すぐ全力でこの場を離れたいと物語っている。
審判小僧とすれ違いざまにガールがボソリとつぶやいた。
「…残念ねー…中立の立場から公平な意見を言える人って、なかなか見つからないのに…まぁ忙しいなら仕方ないわね…」
ガシャリッと音がしてロビーへの扉を前に、審判小僧が動きを止める。
「…相手が素直に話を聞いてくれるような人じゃなくても、車の事故とかみたいに専門家の視点からジャッジしてくれたら丸く収まることって多いんだけどなぁ…。まぁ元から、審判小僧には無理な話だったけど…」
僕達の背後からカシャカシャという音がする…それが審判小僧の座る椅子を吊している鎖が擦れて立てている音だというのは…見なくてもわかる。
ガールがトドメとばかりに畳みかけた。
「そうだわ!グレゴリーさんやってみません?」
急に話を振られたグレゴリーさんがうろたえる。
「私が…でございますか?」
「ええ!案外それで丸くおさま…ふぐっ」
その時、いつのまにか戻ってきた審判小僧が椅子の上から手を伸ばしてガールの口を塞いでいた。
「…ゴメン、ガール…忘れてたよ〜僕…今日は予定入ってなかったんだ〜…てわけでそのジャッジは僕がしてあげるよ…」
笑顔というには恐ろしい顔で審判小僧が笑っている。…その目は全く笑っていなかったが。
「あらそう?ムリしなくってもいいのよ?」
「ムリじゃない!出来る!出来ます!やらせてください!!」
「…そうまで言うのなら…お願いね審判小僧♪」
「ヨシッ!!」
審判小僧がガッツポーズをしている横で、ガールが計画通りとでもいうような黒い笑顔を浮かべていた。
「…女性は恐ろしいものでございますな…」
グレゴリーさんが呟いた言葉に、僕もこっそりと頷いた。
しかしこれで注射器を持ったキャサリンとの一対一の状況は避けられる。
注射器無しの話し合い…それも第三者を交えての話し合いならば危険はないだろう。
…しかし、この時の僕はまだ分かっていなかった。…審判小僧のジャッジに対する情熱を…彼のマイペースさを…何より…『人の話を聞かない』人の思考回路を…。
この場に留まる必要性を感じなくなったためか、いい加減眠りたくなったのか、グレゴリーさんが僕達に挨拶を述べた。
「…それではお話もまとまったようですので…私はこれで失礼いたしますお客様…」
「ダメだよグレゴリー…」
それを制止したのは意外にも審判小僧だった。
「…ちょうどいい機会だ…君にもジャッジの素晴らしさを教えてあげるよ!黒子達!」
審判小僧の呼びかけによって、彼の影の中から黒子たちが現れた。
10人20人ではない…大量の数の黒子達が審判小僧のそばに付き従うように寄り添っている。
…僕達はもしかして、キャサリンのホラーショーを避けるために…審判小僧のホラーショーにかかってしまったんじゃないだろうか…?という考えが僕の頭を駆け巡る。
「…審判小僧ちょっと待っ」
「行け黒子達!特別ジャッジの時間だ…!!」
言い終わる前に、僕達は黒子に取り囲まれた。暗闇が覆いかぶさるように飛び掛かってくる。
僕と同じような状況になっているのだろう…ガールとグレゴリーさんの悲鳴が聞こえた。
二人に手を伸ばす前に…視界が黒子達に覆われて………僕の意識は暗闇に落ちた。
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大活躍(?)…か?ナンダコレ!ナンダコレです。
長くなったので途中でブッチしました。審判が動き過ぎて話が進まん…予定では後2、3話でキャサリン編が終わりますが長くてすいません…
ちなみに、あまりにキャサリン編が長いためかは知りませんが、この間シェフに追いかけまわされる夢を見ました。まさに悪夢…!!いや、いい夢か…!?
あとガールが黒いです!すいません、仕様です!!
さて次回はようやく審判小僧の特別ジャッジ!「キャサリンとの(…)話し合い」です!お楽しみに!!