りたーんず

□06
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危険とは、身近に迫らなければなかなかその恐ろしさが分からないものだ…。
…だが今、僕はそれを実感している…勿論、僕自身の身をもって…。






「お待ちなさぁ〜い〜ッ!!」

逃げる僕達の後ろをキャサリンが追いかけてくる。その手に掲げた巨大な注射器の先端がギラリと光っている。
しかし何よりも恐ろしいのは、その注射器の持ち主の…怒りに満ちた笑顔だった。…あれに捕まったら何をされるか分かったもんじゃない…!!

「べ〜ッ!…待てって言われて待つ奴なんかいないわよ!!」
「だから刺激するのは止めてくれ、ガール!!」

振り向きながらあっかんべーをしているガールの腕を掴み、僕はロビーに逃げ込んだ。

幸い、今は夜のためロビーには誰も居なかった。
しかし食堂の方に行けば地獄のシェフに、反対側の廊下に逃げたらミイラ親子に見つかってしまう。キャサリンはもうドアの向こうに迫っている。
…この後どこへ逃げたらいいんだ…!?


「ボーイ!手を出して!!」

僕が振り返る前に、ガールの腕を掴んでいた手にチクリと、鋭い痛みが走った。

「…今のは!?」
「後で説明するわ…とにかく…キャサリンが入ってきた瞬間が勝負よ…!」

驚く僕を余所にドアが開く。

「…見つけたわよ〜…覚悟なさ〜いッ!!」

キャサリンが注射器を振り上げる。…と、同時にガールが叫んだ!!

「今よ…走って!!」

ガールの合図と共に僕達はキャサリンに向かって駆け出した。
ラグビー選手がグラウンドを走り抜けるように、僕達は注射器を掲げたキャサリンの両脇をすり抜ける。

「なッ…早い…ッ!?」

驚いたキャサリンが振り返るより素早く、ドアを閉める。


…自分の部屋の前まで来て僕達は立ち止まった。
呼吸を整えながら、僕はガールに問いかける。

「…スピードプラスなんて…いつの間に手に入れたんだい?」
「ボーイとグレゴリーさんが話してる時よ?備えあれば、憂いなしってね!えらい?」

キャサリンがドアを開いた。僕達の姿を見て、走って向かって来る。
僕は頷いた。

「…最高に。」

「キャアアアア〜〜〜っ!!」

キャサリンが派手な悲鳴をあげて仰向けに倒れた。ガンッと鈍い音がして、動かなくなる。
…その足元にはバナナの皮が転がっていた。
この廊下に戻ってきた時、ガールが捨てた物だ…。

「もう一個あったんだけど…いらなかったみたいね。…二回もひっかかるなんて、案外ドジなのかしら?」

ガールが手に持ったバナナの皮をぷらぷらと振る。

「…そのバナナの皮も拾ってきたの?…キッチンのゴミ箱から?」
「そうよ〜!役に立ったでしょ?」
「役には…立ったけど…」

…キッチンに行ったということは、最悪の場合…地獄のシェフに鉢合わせする危険があったと思うのだが…知っていて行ったのだろうか…?

…ただの女の子だと思っていたけど…案外、ツワモノなのかもしれない…とガールについて思い直していた時、僕はある事に気がついた。

僕達はグレゴリーさんに認められて住人になった。けれど、他の住人達はホラーショーを仕掛けてくる。…今回は返り討ちに出来たが…そもそも。

「…返り討ちにしちゃったら…また恨み買っちゃうんじゃ…?」

目の前には気絶したキャサリンを、笑顔で突っついているガール。
…僕はため息をついた。

…これから、どうしたらいいのだろうか…?



−−−−−−−−−−−
はい!こんばんは…バナナの皮で転びそうになったことがある…ナンダコレです!!

アレは侮っちゃいけません…中の部分が擦れる事によって摩擦ゼロの世界が体験出来てしまいます…おそろしや。

さて今回は予告通りガール大活躍の巻きでした。しかし逆効果!!はたしてキャサリンと仲直り出来るのでしょうか…?

次回は意外な助っ人(?)登場の予定です。




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