りたーんず
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次の日の夜、僕は…いや、おそらく僕たちは、なかなか眠る事が出来なかった…。
…変に思われるかもしれないが、僕は覚悟を決めてベッドに入り、眠りについたのだ。
…あの悪夢に、再び立ち向かうために…
目を覚ましたのは、自分の部屋だった。
…見覚えのある…グレゴリーハウスの中の自分の部屋だった。
予想はしていたが、本当に戻ってきた事に少し苦笑が込み上げてくる。
あんなに必死になって脱出したのに…結局また戻ってくる事になるとは…。
その時、部屋の扉がノックされた。
どうぞ、と投げやりな声で返事をする。
ガチャリ…キィ…とすこし軋んだような音がしてドアノブが回り、扉が開いた。
…誰が入ってきたのかなんて見なくても分かる。
「…失礼いたします。お客様…お目覚めはいかがですか?」
「あまりいい気分じゃありませんね…グレゴリーさん」
僕の嫌味にも眉一つ動かさずに老ネズミは薄く笑う。
「…左様でございますか…まぁ、そうでしょうね…何しろ、お客様方がお戻りになってから…丸二日、ずっと眠り続けていらっしゃいましたから…無理もないかと…ヒヒヒヒヒッ」
グレゴリーが笑うと持っている蝋燭が揺れ、壁に写った影が怪しくうごめく。
相変わらず、この老人の笑い方は聞いているだけで鳥肌が立つ程不気味だ…。
「…丸二日…寝ていたんですか…」
本当なら、昨夜の時点で目覚めていたはずなのだが…昨夜は死神さんに呼ばれていたからグレゴリーハウスの中で目覚めずにすんだのだ…。そう思うと昨日、僕等を夢の中で呼び出して事情を説明してくれた死神さんに感謝したくなる…もっとも、この事態の原因は彼にあるのだが…。
そんな事を考えていると、いつの間にか近づいていたグレゴリーが僕のすぐ側に立っていた。
俯いた顔を覗き込むように見上げられて、ビクリと肩が跳ね上がりそうになる。
「お客様…だいぶお疲れのようでございましたが…今までどこにいらっしゃったのです?…いえ、何処からどのようにお戻りになったのかを聞いた方が早いのでしょうかねぇ…?」
紳士的な口調を崩さないグレゴリーだが、その目は笑っていなかった。
「…お客様方は愚かしくも…辛く、苦しいものでしかない『現実』で生きる事を望まれました…私は貴方々の満たされぬ欲望でございます。…ですが貴方々は…私との繋がりを断ち切って行かれました…。唯一その絆…『満たされぬ欲望』こそが、このグレゴリーハウスとお客様の心を繋ぐ懸け橋となるのでございます!しかしお客様方は今回、私との繋がりも無しにお帰りになられました!…一体、どのようにしてお戻りになれたので?」
丁寧な口調だが、それが余計に恐ろしく感じる。
…この老人からホラーショーを受けた事はないが…もし今なら、その恐怖の何百分の一くらいは理解できそうだ…。
しかし、怯むわけにはいかない…。
恐怖を押し殺し、僕は無理やり笑った。
真正面からホテルの…この世界の主の目を見据える。
「…知りたい…ですか?」
「ええ、是非。」
怯えている暇などはない。
昨日、死神さんから聞いた話によると、僕たちが本当に現実に戻るためには、これしか方法がないのだ。
「じゃあ…条件があります。」
「…なんでございましょう?」
僕たちが…この世界で、生き残るために。
「僕たちを正式に、このグレゴリーハウスの住人にしてください。」
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亀の歩みって、こーゆー事を言うんだねッ!
まさかの第3夜のこの中途半端感!!
グレゴリーでなくてもイライラもんですね!
次回ではちゃんと死神さんの説明も入れます。