GIFT

□【捧】 カクタス日曜日!(ガンマンと子供達)
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とある日曜日。

グレゴリーハウスでの娯楽は意外と少ない。
せいぜいがテレビか地下のカジノだけだ。
そのテレビで朝の子供向け番組を見終えてしまった子供達は、次の「遊び」を今日も元気に相談しあう。

「今日は誰と遊ぼうか〜?ニヒヒッ」
「はやく回して!はやくはやく!」
「オッケー!!」

ルーレット小僧の言葉にミイラ坊やが元気にルーレットを回す。
くるくる回ってルーレットの針が止まる。針の指し示すサボテンの絵柄にジェームスは目を細めた。

「ようし!今日はカクタスガンマンのおじちゃんトコに行くぞ〜!!」
「「「お〜!!!」」」



その日、カクタスガンマンが不意に聞こえたノックにびくびくしながら部屋のドアを開けると、そこにはボーイが立っていた。
…ものすごく充血した据わった目で。

「…頼まれてたモノが出来たから持ってきたよ…」

ボーイが小脇に抱える…布に包まれた『注文の品』を見ながら、カクタスガンマンは内心ため息をついた。
…まさかここで「そんなもの頼んでいない」とは…言えないよなぁ…。




全ての発端は三日前、ロビーで審判小僧達の吊り椅子の整備をしているボーイにばったり出くわしたことから始まる。

「お?何やってんだアミーゴ?」
「ああ、ガンマンか…審判たちの椅子のメンテナンスだよ。油注してるんだ」

ボーイの言葉に、審判小僧たちが胸を張って整備された吊り椅子を自慢してくる。

「すごいんだよ〜!!全然軋まなくなったんだ!!」
「長年使ってるし、さすがにあちこちガタがきてるからね。今後のジャッジのためにも整備をお願いしたんだ…動きも滑らかだし、回転もブレーキも以前より良くなってる…本当に彼に頼んで良かったよ」

やはり私の選択に間違いはなかったね!と満足そうに語る審判小僧ゴールドのセリフに、ついポロっと言ってしまったのがいけなかった。

「へぇ…すごいなアミーゴ!そんなに腕がいいんならオレの銃ももっと当たるようにしてくれねぇか?」

カラーーーンッッッ!!!

その瞬間、ボーイが持っていたスパナを取り落とした。
こちらからは彼の顔は見えなかったが、その代わりに審判達が今までの笑顔を引っ込め、青ざめて慌て始める。

「カクタスガンマン!早く撤回して!!」
「え?なんかオレ、まずいことでもいったか?」
「馬鹿野郎!アンタの腕前は自前で銃のせいじゃねぇだろうが!!」
「な…その通りだがヒドイぜ!!審判セカンド!!」
「…君は、アレを見てもそう言い続けるかい?」

微かに震えてながら審判ファーストの示す先では、サードとフォースがぎこちない笑顔でボーイの肩を持って励ましている。

「カ…カクタスガンマンも!冗談で言ったんだから!!」
「そうだよ!この世には『不可能』って言葉もあるんだから!!」
「フォースちゃんそれはフォローになってないよッ!!」

あ、とフォースが口を押さえた時、ゆらりとボーイが立ち上がった。
うつむいたその顔は見えなかったが、見上げているサードがいつにもまして涙目になっている。フォースでさえ、顔から笑顔が消えていた。

「不可能…不可能だって?あはははは面白いですねぇ面白いじゃないですか…『カクタスガンマンでも百発百中の銃!!』…できないですって?僕に…馬鹿にしてるんですか?」

顔をあげたボーイが酷薄に笑う…地獄のメカニックの形相をして。

「…三日だ…三日寄こせ…思い知らせてやろう!!その侮辱ごとつぶしてやろう…不可能という文字を!!ふはははははは!!」
「正気に戻ってボーイ!今の君…スッゴくラスボスみたいになってるよーーーーーー!!」
「あーあ…怒らせちゃったね〜。まぁ、自業自得だから一人で対処しなさい」

…という感じで、完全に怒らせたボーイが部屋に引きこもってしまったのが三日前。

そして今日、その『カクタスガンマンでさえ百発百中の銃』が完成したというわけである。

「どうだい?ちゃんと三日で作ったよ…」
「ああ、アミーゴ!わかったアンタの腕は一流だ!…だからちゃんと食事をとって寝てくれ!!フラフラじゃないか!!」
「食事?なにそれおいしいの?」
「おいしい!…と思うぜ…多分!!」

…ただしシェフの料理は当たり外れがあるのでおいしいと一概には言えないが。
…ボーイが引きこもったここ三日間食事(ちなみにここのところ全部ハズレの方)を残されたシェフの怒りは、すべて元凶のカクタスガンマンに向けられボーイの分も食事を完食させねばならなくなり、とても大変な目にあった。…本当に地獄だった。

しかし何より、ボーイの顔色が相当に悪い。
目の下にはくまができ、頬は痩せこけ…一言でいうと死相が出ている。

こんな状態のボーイを見たらキャサリン(の注射器)が放っておかないだろう。

「でも…試射がまだ…」
「試し打ちは後でいいから!とにかく少し休んでくれ!!じゃないと受け取れないぜ!!」
「…わかったよ…じゃあ」

渋々といった様子で、ボーイは頷くと…その場に倒れた。

「おや…すみ…」
「地面で!?」

カクタスガンマンがツッコミを入れた時には、すでにボーイは床で爆睡していた。
疲れ切った寝顔に良心が痛む。

「本当に…すまねぇ…アミーゴ」

藁のなかに突っ込んでおくのも気がひけ、ボーイの部屋に運ぶのもキャサリンと出くわすことを考えると危険な気がしたので…仕方なく一時的に自分のベットに寝かせておくことにした。
しかし、銃(らしきもの)をどうするか。

「まぁ、隣なら大丈夫だろう…」

こうしてガンマンはボーイを引きずって隣の自室へと戻って行った。

「「「オジちゃーん!あーそーぼー!!」」」

その数分後、カクタスガンマンの部屋に子供たちが一斉にやってきた。各々がカウボーイハットやスカーフを身につけ手に水鉄砲を持って。

「しーっ。静かに。ボーイさんが寝てるんだから!」
「え〜?なんでボーイおじちゃんがここで寝てるの?ねぇなんでなんで?」

カクタスガールが注意しても、全然静かにならない子供たちに、仕方なくカクタスガンマンは子供たちの要求に従うことにした。

「わかった!遊んでやるから先に隣に行ってな!」
「「「うわーい!!」」」

「すまねぇ、妹よ。ちょっとの間ボーイを頼むぜ!」
「わかったわ!まかせて兄ちゃん!!」

その時、ふとボーイの手に握られている紙に気づいた。
手に取ってみると「取扱説明書」とある。

「・・・・・・しまった!!!」

急いで荒野の部屋に戻ると、時すでに遅し。
ボーイの作った銃の包みを子供たちが開いている。

「すごーい!バズーカだー!!」
「ああ遅かったか…って!!バズーカだと!?」

ジェームスの背丈くらいはありそうなそれは確かに銃、というよりはバズーカに近い代物だった。

包みの大きさからして変だとは思ったが…まさかバズーカサイズの銃とは…まぁ、バズーカも一応銃火器だけども!!

いやな予感がしたカクタスガンマンは、取扱説明書を開いた。



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