読み物

□サボリ
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「光秀!!大変なんだ半兵衛が!!」
バァンと勢い良く開け放たれた保健室の扉の先には生徒会長の豊臣秀吉とその肩に担がれた副会長の竹中半兵衛が居た
おやおや、とつい先ほどまで飲んでいたコーヒーのカップを机に置いて保健医の明智光秀は手ぶりでそこのベットに寝かせなさい、と指示した
「で、今度は何なんですか?」
この竹中半兵衛、事あるごとに頭痛や腹痛に眩暈・嘔吐・吐血など様々な理由でしょっちゅう保健室に運び込まれているのだ
そのたびに親友であり生徒会の会長である大柄な青年、豊臣秀吉がその巨体ににあわずおろおろと慌てていると言うのがこの二人のお決まりのパターンなのだ
「今度は半兵衛が急に倒れたんだ!!診てやってはくれないか?」
私も暇では無いのですがねぇとわざとらしく文句を言い、光秀はまだ仕事が残っているであろう秀吉を帰し半兵衛の脈疹をはじめた


「おかしいですね、脈が乱れている様子は無いのですが・・・・」
首を捻り一応熱をはかろうと体温計を取りに半兵衛に背を向けた瞬間に背中にずしっと重い衝撃を受ける
「半、兵衛・・・・・?」
「やぁ!良い天気だね明智センセ」
病気の気配などまったく感じさせない清々しい爽やかな笑みを浮かべて光秀の背に体重をかけ窓の外を指差す
因みに窓の外は気の滅入る様な曇り空
「・・・・・病気は、如何したのですか」
むすっとした顔で問う光秀にそんな顔似合わないよと半兵衛がニコニコと笑いかける
「病気は此処に来るための口実でさぁ、まぁ仮病ってヤツ?」
堂々と仮病だと言ってのける半兵衛に怒りを通り越して呆れすら感じる
「僕がいくら天才だからってこんな多忙に告ぐ多忙だと参っちゃうからね、本当に倒れる前に休みに来ちゃった」
疲れてはいるらしいが、その割りに自分への賞賛は忘れていないようだ
「秀吉には?」
「さっきの様子を見たら分かるだろう?」
伝えてないよ、と悪びれる様子も無くさらりと言って光秀の背中から漸く退いた
ぶつぶつと重かっただの邪魔だったなど文句を言いつつも無理に帰らせようとしない辺りに光秀の優しさを感じる
「1時間だけ寝かせてあげます、そしたら帰りなさい」
後ろ手にカーテンを閉めながらぽつりと光秀が半兵衛につげる
わかったよと聞いているかも分からない光秀に返事を返し半兵衛は独り思っていた


「本当は光秀君に会いに来たかっただけなんだけどね」


独り言のように苦笑しつつ光秀に聞こえないように呟いて目を閉じ、静かに眠りに付いた

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