MAIN2

□幸せを手に・・・
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「あなたいつまでそうしてるの?」

ソファのうえにうずくまっている雇い主に声をかける。

「・・・」

まったく。

落ち込むとわかっているのなら、彼に嫌がらせをしなければ良いのに。

まったくはた迷惑だわ。

でも、なんだかほっとけないのよね。

はぁ・・・

「今回は、何を言われたのかしら?あの平和島静雄に」

「静ちゃんじゃ無いかもよ」

「彼意外であなたをこんな風にできる人がいるとは思えないわ」

「・・・」

むくりと黒い塊―――折原臨也が起き上がった。

やっと顔が見えたわ。

泣いてはいなかったが、目にうっすらと涙の膜が張っている。

「嫌いって言われた」

「いつも言われてるじゃない」

「今回は、意味が違う・・・」


途端にジワリと臨也の瞳から雫が溢れ出した。


それこそ声は出ていないもののボロボロと透明な雫は頬を伝っていて。

一体何があったのかしら?

初めてとは言わないが、かなり弱っている姿に首を傾げる。



先に準備していた彼の好きな紅茶を彼の前に置く。


カチャリと静かな部屋に陶器の触れ合う音が響いた。


無言で先を促せはば、やっとしっかりとソファーに座り紅茶に手を伸ばした。



「俺、しずちゃんに勇気を出してね、今日告白したんだ。でも、しずちゃんは俺のこと嫌いなんだって・・・」


ああ、馬鹿ね。

彼も・・・


とうとう最後まで顔を上げなかった臨也からこぼれ落ちた涙は、ポチャンと紅茶の中に一滴吸い込まれた。



ポチャン。


また一滴――――


「紅茶に必要なのは、塩分じゃなくて、甘い砂糖よ。」


ぽつりとそう呟けば、下手くそな笑顔で返された。


いつもの飄々としたムカつく顔は、どこにおいてきたのよ。



そんな無理をした、悲しそうな笑顔・・・全く貴方に似合わないわ。



「素敵無敵の情報屋さんが聞いて呆れるわね。」


「本当。どれもこれもしずちゃんのせいだ。」



そんな笑顔で笑わないでちょうだい。



「私は、貴方のそんな顔嫌いだわ。」

「酷いなぁ、波江さん。」


ずず・・・と静かに俯いたまま紅茶を飲んだ彼が、「まずい」と一言こぼしたの
を無視して、携帯を開く。


私は好きなように行動させてもらうわ。




「もしもし、平和島さんですか?初めまして、折原臨也の秘書です。
折原臨也の必死の愛の告白を断るだなんて、貴方本当に馬鹿なのね。
嫌いとまで言ったんだから、誰かに彼を取られてもいいのよね?」


相手の息を呑む音が聞こえたのを最後に、電話を切ってやった。




耳から携帯を話すと、ポカンとした顔の折原臨也がいて・・・



その顔は、嫌いじゃない・・・と頬を緩めた。





つづく

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