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□過ち
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「・・・」

「おい、臨也」



いつもと違って、何も言わない臨也に不審に思い呼びかける。

まさか、化け物って言われて傷ついたとかないよな・・・。


すぐに、言い返されると思ってたんだが・・・。


さすがに、今の臨也に標識を投げるほど俺は、 KYではない。


しかし、うつむいてしまって、表情が見えずどうすることもできない。


「お「そうだよ。しずちゃんの言う通りだよ」・・・」


俺の言葉をさえぎられて発せられた言葉に、俺は疑問を感じた。



俺の言う通り・・・?
どういうことだ?



ゆっくりと顔を上げる臨也。
なぜだか、その顔を見たくないと思った。







「・・・俺は、化け物だ」



・・・!!


『化け物だ』と言い切った臨也の瞳は、いつかの・・・あいつの瞳と同じだった。



そうだ・・・。
ここまで仲が悪くなったきっかけの・・・


新羅と門田に支えられ、額から真っ赤な血を流す臨也の姿が、頭をよぎる。


『化け物』と今日と同じように口にしたときと・・・同じ瞳。



もしかして・・・あれは俺に言ったんじゃないのか?


まさか・・・。




「ど、どういうことだ?」
「どうもこうも、先にしずちゃんから俺に、化け物って言ったじゃん。俺は、化け物だよ。」


にっこり。音にするならそんな感じだろう・・・。
臨也が、笑うが目は、まったく笑っていない。

あの時とは、くらべものにならないほど背筋が、すうっと寒くなる。




もしかして、俺は大きな過ちを犯したかも知れない・・・。



「俺が、言ったのは・・・そういう意味じゃない・・・。まず、てめぇは・・・おかしいところなんか・・・ないだろ」
「そういう意味ってどういうことかな?化け物って言葉に意味なんか一つしかないでしょ。
それに俺は人間と違って・・・」


チャキ・・・。
臨也が愛用のナイフを取り出した。

・・・何をする気なんだ?

そう思って身構える。



――――と、


「うっ・・・」


おもいっきり自分の腕に突き刺した。

僅かにひらかれた口から、小さくうめき声がこぼれる。


「お、おい!!てめぇ何やってんだ!!」


さらに深く腕にナイフを突き刺そうとしたのを見て慌てて、臨也の手からナイフを奪い取り遠くに投げ捨てる。



掴んだ臨也の手は小刻みにふるえていた。


反対の刺した手からは、血が溢れている。
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