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□化け物
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あの夢を見てから、俺は、どこかおかしくなってしまった。
些細な言葉にもつい反応してしまう。
しずちゃんとのいつもの追いかけっこのときも・・・
しずちゃんが、いつものように俺に向かって放った『消えろ』という言葉につい固まってしまって、怪我をしたのは、まだ記憶に新しい・・・。
その時、しずちゃんが、なんかすごくあせった顔をして立ち止まったのを利用して急いで逃げてきた。
まあ、どうせすぐに治るからべつにいいが・・・
それに俺は人間じゃないし
そんなことを言ったらマイルとクルリに怒られるが・・・。
いまだに、あの二人は、頑として俺が人間だということを譲らない。
それどころか、変な性格をつくりだして、俺と同じなんて言い出すしまつ・・・。
そこまでされては、口が裂けても人間じゃないとは二人の前では言えなくなった。
そんなことをいったら、二人の存在まで人間じゃないということになる。
ついでに波江さんにいったら馬鹿にされた。
言い分は、世の中にはもっと頑丈な人がいるとの事。
だから、特別でもなんでもないといわれた。
しかも、父との話をすると、それくらいの薬くらい私にも作れるといわれた。
それが、気遣いだとわかったときは、俺に対する波江さんなりの優しさだと気づき嬉しかった。
なんだかんだ言いながらも俺は、愛されている・・・と。
身体が丈夫なこと以外、人と変わらない・・・と。
彼女たちに支えてもらっていた。
だけど・・・
苦しさは少しずつ俺を浸蝕していっているのも確かだった。
どうしても、人に『死ね』だとか『消えろ』と言われれると自己嫌悪におちいってしまったりする。
ああなると自分を止められない・・・
以前なんか、硫酸を飲めば流石に俺でも死ぬんじゃないかと思ってやろうとしたら、波江さんにばれて、ひどく怒られて監視下におかれた。
あの時の波江さんは、とてつもなく怖かった。
まるで、鬼女のように・・・。
だけど止められない・・・
心配するとわかっているのに、止められなくて・・・そんな自分に嫌悪するという悪循環。
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「やあ、しずちゃん」
そして今・・・自己嫌悪中にしずちゃんと会った。
ああ、最悪だ・・・。