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□壊れて・・・
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目の前に差し出された薬・・・



これを飲めば俺は人間ぢはなくなってしまうのだろう。




あぁ、父さんは本当に変わってしまった。




ねえ父さん、俺は、人間が好きなんだ。




確かにすぐ、傷つくし、脆くて壊れやすい・・・


しかも、力もない。
だけど、俺はありのままの人間が好きなんだ。




だから、俺はしずちゃんのようになりたいとは思わないよ。




はっきりと父さんにそう言いたかった。





しかし俺の口は閉ざされたまま。




心の奥底に、父さんが俺を選んでくれたことに少し嬉しい気持ちがあるのも事実だから・・・。



ああ、狂っている・・・俺も父さんも・・・。





喉に焼け付くような痛みを感じた。



怖い 恐い こわい



あ〜あ、これでもう、俺は人間じゃない・・・。




「臨也!どうだ?何か変わったか?」


興味深々といった様子で、父さんが聞いてきた。



・・・あれ?
薬を飲む前と何も変わっていないような・・・。




「えっと、父さん。何も変わっていないような気がするんだけど・・・」



おずおずと言うと、『一応、これを持ち上げてみてくれ』と言われた。




変わっていないようにみえて、本当は変わっているのだろうか?


目に見えて重そうなダンベルに手をかける・・・





・・・お、重くて持ち上がらない。

やっぱり変わっていないみたいだ。



俺はまだ人間のままだ!!


「父さん、やっぱり持ち上がらないよ」


思わず嬉しくて声が弾んでしまった。



「臨也・・・お前は何を嬉しそうにしているんだ?」



あ、しまった。




父さんの瞳は、とても冷たい・・・それは、異常をきっした人の目だった。




「お前は失敗作だ」

「もう、いらない」




父さんの手が何かをつかみ、そのまま、それを俺に・・・

かけた・・・。





記憶力の良い俺の頭は、それが何なのか覚えていた――――――――




「あ゛あ゛あ゛あああああ!!!」





肉のとける臭いが書斎に充満した。








(父さんは俺を見て・・・)
(笑っていた)

(頭に浮かんだ薬品名は)
(硫酸・・・)
 

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