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臨也視点
ああ、何だろ?何か物たりない。
新羅の家から戻るとそればかり考えていた。
仕事で忘れていることもないし・・・。
一応、波江さんに確認してみたが何もない。
それにしても・・・新羅のところで絡んできた、あのバーテンダーの男はなんだったんだろう、ふと頭をかすめた。
ちくりと感じたと同時に心がざわめく。
これは何に対しての感情か・・・?
「新羅のうそつき・・・」
なぜだかそんな言葉がポツリと口からこぼれた。
トルルル・・・。
私用の携帯からの着信音。
いらない考えを振り払うように頭をふった。
しずちゃん
・・・誰だこれ??
表示された名前に首をかしげる。
まあ、出てみたらわかるだろうと通話ボタンを押した。
「もしもし?」
「・・・臨也か?」
それは、ついさっき考えていたバーテン服の彼、声・・・。
あれ?
俺って彼と知り合いだっけ?
初対面かと思ったんだけど・・・
「あのう、すいません。誰だかよくわからないのですがいつ知り合いましたっけ?」
仕事の時とおなじ丁寧な口調で話したはずが忌々しそうに舌打ちされた・・・。
「・・・」
「あの・・・
「そんなこと、どうだっていい!!!」
今度は、悲痛そうに叫ばれた。
・・・一体何なんだ。
「今から、そっちに行く!!」
「は?」
「いいか、絶対に出かけるなよ!!」
プープーー。
・・・切られた。
その時初めて、涙を流していてことに俺は気づいた。
(分からない、わからない)
(俺はなにを忘れている)
(ああ、頭が痛い・・・)
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