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□前進
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静雄視点
仲良くなりたかった
壁があるなんて思わなかった
ボロボロと再び泣きながら臨也の発した言葉に思わず耳を疑った。
そんな風に臨也が、思っているなんて思いもしなかった。
だって、今まで俺たちは犬猿の仲で・・・
まさか、俺は、また何かとんでもないことをしたのか・・・?
今回、臨也が、こうなった発端はほとんどが俺だと思う・・・いや、実際そうなのだろう。
俺は、なんど臨也を悲しませるんだ・・・
でも、これは最初に臨也が俺を拒否したんだ。
言い訳を心の中で呟けば、新羅が俺のに厳しい視線を向けていた。
何なんだ・・・
門田に視線を向ければ、臨也に近づき優しく背を撫でていた。
門田を頼るように身体を寄せる臨也・・・。
悔しい・・・
俺は、泣かせるだけで、門田のように優しくしたいのにすることができない・・・
「静雄。」
「何だ、新羅・・・」
顔を向けず声だけ返せば、こちらをちらりと門田が見た。
隣に来た新羅が頷いたことで門田が、俺じゃなくて新羅を見たのだと気付いた。
「静雄、部屋を出よう」
「は?」
手を引っ張られ、部屋を出て行く瞬間、臨也が、そぉっとこちらを見て、目が合った。
俺は、そのさびしそうに縋る瞳の臨也の顔が忘れられなかった。
*******
「静雄、いつになったら素直になるんだい?臨也のこと好きなんだろう。避けずに話しかけなよ。」
「で、でも、臨也から拒否したんじゃねぇか・・・」
はぁ、と大きくため息をはかれた。
デジャヴだ。
「静雄、聞いたでしょ。臨也は、君と仲良くなりたかったんだよ。話しかようとしてたのに、君が暗い顔してるから、泣いちゃたんだよ」
泣いたってまさか、さっきの・・・
あれは、俺が暗い顔をしてたから・・・?
だとしたら・・・
もしかして、さっきの顔も・・・
「静雄、何を勘違いしてるか知らないけどさ、行動しないと前には、進めないよ。引いてばっかじゃ、逆に悪い方向にいくときもある。
いまがまさにそうだ。静雄は、それでいいのかい?」
そんなの嫌に決まってんだろ。
ニヤリ
俺は、笑った。
「新羅、戻るぞ。俺は、臨也に言いたいことがたくさんあるからよぉ」
「それでこそ、静雄だよ。臨也も君を待ってるよ」
そう言った新羅は、明るく笑って俺の背をたたいた。