キリリク

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屋上に上がるにつれ、啜り泣く声が大きくなる。



新羅の言った通り臨也が泣いているのだろう・・・



屋上まで、あと1歩・・・



「臨也!!!」


俺は叫んだ。


門田に抱き着いて、泣いていたらしい臨也が、ビクっと震える。




一体いつの間に、門田きたんだよ・・・




違うと分かっていてもどす黒い嫌な感情が、体中を駆け巡る。



おい、臨也こっちを見ろよ!!

門田なんかに抱き着いてないで・・・




「し、しずちゃん・・・?」


俺の思いが伝わったのが、ゆっくりと臨也が顔をあげる。



涙の跡が色濃くのこる頬・・・俺の名前を呼ぶ声は、心なしか、震えているように聞こえた。



「臨也、言いたいことがある。」
「・・・」
「悪いけどよ、門田出ていってくれないか?」



門田をはさんで俺は、話たくない。



「あぁ、わかった」

軽く臨也の肩を叩くと行儀悪くまだひっつこうとする臨也を引きはがして、門田は、でていった。





「臨也・・・」


俯いたまま微動だにしない臨也に近づこうとすれば、シャキンと耳慣れた臨也がナイフをだす音が聞いた。




臨也と俺との間が妙に遠く感じられる。



今すぐにでも、そばに行きたいのに・・・



見えない壁があった・・・


「なんのようかな?しずちゃん。俺を笑いに来たの?」


ポタポタ涙流しながらそんなこと言うなよ。


「まさかしずちゃんに騙される日が来るなんて思いもよらなかったよ」


口調だけそんなに明るくても意味ねぇだろ


「一瞬でも信じた俺が馬鹿だった」


半ば悲痛そうに叫んだ臨也に堪えられず、ナイフが刺さるのもお構いなしに臨也を抱きしめた。



「しずちゃん?!」


焦ったような臨也の声。


カラン。

ナイフの落ちる音がした。


「臨也、さっきは悪かった。勘違いしちまったんだ・・・」


戸惑うような気配。


今にも壊れそうな小さい身体の臨也をとても愛しく感じる。




「臨也、好きだ。俺と付き合ってくれないか?」



臨也の手をとりひざまずく。



まるでプロポーズのようだと思った。


顔を覗き込めば臨也は、りんごのように真っ赤でとてもかわいくて・・・




「付き合ってもいいよ」



本日2回目となるその言葉に俺は、


「離さねぇからな」


といって、臨也を腕の中に閉じ込めた――――――。




やっと訪れた幸せな午後――――――
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