薄桜鬼

□一歩
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それからさらに二週間が過ぎようとしていた

卒業式も終わり、あとは進級がかかっている学年末試験を乗り越えれば春休みだ

普段から割と真面目に授業を受けてはいるが、理解力が足りないのか試験が難しいのか物理の赤点からはほぼ毎回逃れきれていない

ということで今日も放課後の教室に残って試験勉強をしているわけで。



すうがくしたい。


わからないとことか、聞きに行ってもいいかな。


永倉先生が物理担当だったらきっともっと頑張れるんだろうな。


あ、そしたら数学できなかったかも。




永倉先生が担当ならなんでも頑張れるなんて、我ながらゲンキンな考えに苦笑が漏れる


「集中、切れちゃった」


自分ひとりしかいない教室でぽつりとつぶやく。

ぐっ、とひと伸びしてから力を抜いてノートと参考書を鞄にしまい戸締りをする

外は思っていたよりも暗く教室の明かりが明るすぎるくらいに思えた



「まだ誰か居るのか?」


「!、原田先生!もう、おどかさないでくださいよ。吃驚しちゃったじゃないですか」


「くっ、悪いな」


「悪いと思ってませんね?顔が笑ってますよ?」


軽くコントのような会話をしながら二人で昇降口へ向かう

あのとき、原田先生に自分の、永倉先生に対する気持ちを言ってしまってからは何となく原田先生の傍に居やすくなった

焦っていたとはいえ軽々しく口にしていいことではないのに、私の気持ちを知った原田先生が職員室まで手を引いてくれた優しさに。

このひとは怒らないんだな、と
好きでいてもいいんじゃないかと言外に伝えてくれたような気がして。

まぁこの人には千鶴ちゃんがいるって知ってから、この人にだけは味方でいてもらえると勝手に思っていて。

永倉先生について相談するわけでもなく話を聞くわけでもないのだが、原田先生の傍が落ち着くのは私の秘密を知っているから。
案外恋話をした人には心を開きやすいのかもしれない。
でも、あんまり原田先生といると千鶴ちゃんが怒るだろうからたまにだけ。


今度、千鶴ちゃんにも相談してみようかな。
でもあんまり広げるのは良くないよね。
でもでも、千鶴ちゃんは"奇跡"を掴んだ子だし。
いつか話を聞いてみたいな。




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