雨のち晴天也!
□親友
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「じゃあ行ってきます」
「ああ、気をつけろよ」
「はい」
春。新学期。
先日始業式を終え、一番仲良しの子とクラスが離れてしまい少し寂しいスタートとなった奏。今日は高二になって初めての授業。午前中の授業をこなせば待っているのは昼食タイム。
今朝も早起きしたのでいつも通りお弁当だ。
片倉さんの腕前と比べてもらっては困るが一応片倉さんの分も作った。食べてくれるだろうか。
そういえば家事は無理矢理自分にやらせてもらうことにした。片倉さんは分担する予定だったらしいが、そのくらいはさせてもらわないとタダ飯食らいになって申し訳ないからとゴリ押ししたのだ。
何か気に入らないらしく最後まで分担するぞと粘られたので、片倉さんの帰りが早い日は夕食を作ってもらうということでうまく丸めた(折れてもらった)のは昨日のこと。
そんなことを思い出しているといつの間にか、かすがが目の前に来ていた。
「ふーん。それで奏は今、その片倉とかいう男の家に住んでいるのか」
「うん」
春休みは何をしていたかという話から発展し、引越しの報告をかすがにした。
「信用できる奴なのか?」
「わふぁふぃふぉおふぉおう!」
「食べてから喋れ」
「…ん、私のお父さんとお母さんのお墨付きだし、二人の会社の社長からの推薦でもあるみたいだからたぶん…」
「それは周りの意見だろう」
「うん…そうだね…」
「奏はどう思うんだ」
「大丈夫、だと思う。…………たぶん」
「たぶん?」
「うん。だってさ、一緒に暮らし始めてまだ三日しか経ってないんだし片倉さんがどんな人かなんてわかんない。―でも」
「?、なんだ?」
「…でもね。私を預かってくれる初日にね、私の両親に小さい頃お世話になったからお礼がしたいって。私の両親と社長を裏切る様なことは絶対にしないって言ったの」
「…あのな、奏。これは脅しで言うわけじゃないが、まず最初に絶対という言葉をホイホイ使う奴は信用できん。それに、さっきのそれが嘘じゃないという保証はどこにも無い」
少し呆れ混じりに、でも少し困った様にかすがが言う。
「嘘じゃない。嘘じゃないよ。ありがとうかすが。かすがは私を心配してくれてるんだよね。でもね、片倉さんのあの時の目は本気だと思ったの。根拠は無いし、ただの私の勘だけど。あの人は大丈夫。そう思うの」
「……そうか」
「うん。」
「奏がそこまで言うなら私は何も言わん。―だが、もしも何かあったときはいつでも頼ってくれ。私だって奏の力になりたいと思っているんだ」
「っ、ありがとう、かすが!」
少し照れてそっぽを向きつつもそう言ってくれた可愛すぎる親友に私は抱き着いて感謝した。