戦国BASARA

□指定席
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「おい、天野」


突然名指しされた

ちなみに今は数学の授業中

私を呼んだのは、担任でもあり数学担当の片倉先生


「何教師にガン飛ばしてんだ?」

「へ?いやいや、飛ばしてないです、けど」

「そうか?今日授業始まってからずっとこっち睨んでたじゃねぇか」

「え?そんなことしてないですよ」

変な言い掛かりはやめてください。そう続けようと思ったが、この強面でお堅い先生は冗談なんか殆ど言わない人だ。何か理由があるのだろうと、今日の自分を振り返ってよく考えれば思い当たる節がひとつだけあった。


「……あ。あーそれ、もしかしたら、いや、でも睨んでたわけじゃないですよ。私今日眼鏡忘れちゃったから目をこらして黒板見てたんです。だからたぶん、それだと思います。」

十中八九これのせいだろう

私の眼は乱視の為、眼鏡が無いと黒板の字がぼやけてしか見えないのだ。しかも残念なことに視力が下がったのはここ最近。
普段から眼鏡が必要なわけではないし、まだ眼鏡をかける習慣が定着して無いので家に忘れてしまうこともしょっちゅうある。


「そうか、眼鏡か」

「はい。紛らわしくてすみません。気にせず授業進めてください」

「………」


何かを考えるように黙り込んでしまった片倉先生に、どうしたのだろうかと疑問だけが浮かぶ


「今日の授業はここまでだ。席替えするぞ」


突然の、しかもいつもの片倉先生らしからぬ突飛な発言に私だけじゃなくクラスの誰もが驚いた


「え。ちょ、ちょっと待ってください!」

「あ?」

「授業はどうするんですか?!」

「いいんだよ、ここのクラスは他のクラスより2回分くらい進んでんだ」


なんだって?!

道理で授業ペース早いわけだ!早過ぎてまた置いて行かれそうになってたところだったよ!


片倉先生ってしっかりしてそうで案外抜けてる人なんじゃないかしら。


私がそんな失礼なことを思っている間に、およそ3ヶ月ぶりの席替えにはしゃぎ始めるクラスメートたち




「お前、一番前な」

片倉先生から御指名いただきました。

「え?!イヤですよ!」


「黒板見えないんだろ?」

「だってせっかく一番後ろなのに!」

「いいじゃねぇか、それくらい。こっちは特等席だ。この俺がみっちりお前の面倒みてやるよ。」

「贔屓はいけませんよ先生」

「贔屓なんかしねぇ。…そうだな、じゃあ天野がここの席っつーのに異論のある奴はいるか?」

「「「いませーん」」」

「「「むしろありがたいでーす」」」

ちょっ、皆?!

いくらなんでも正直過ぎやしませんか?!


「……丁重にお断りいた「天野」


…あの、えと、笑顔が黒いです先生


「お前、この前の俺が作った中間試験で何点取ったか忘れたとは言わせねぇぞ」


「喜んで前に行かせていただきます」


横暴だと叫んだらあの悲惨な点数をしれっと暴露するくらいやりかねない。

そんなことを思いながら、クラス中の感謝と同情を浴びて席を移動した





さあ、お勉強しましょうか


そこに「他の先生方から目をつけられないように」なんていう先生なりの優しさがあったなんて気付かなかった





















学パロなのにラブじゃなくてごめんなさい



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