short

□可愛い人
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今日は12月25日
世間では赤と白と緑が溢れ、恋人達も溢れ、幸せも溢れている(らしい)クリスマスだ

私の家では「家はキリスト教じゃないし」という両親の発言により、気づいた頃にはクリスマスなんてあって無いようなものだった。

だから今年も特に普段と変わらず過ごす予定だったのだが。

「今日はクリスマスなんだろ?葵は何かしないのか?」とソファーでくつろぎMAXのサーヴァントに質問され、今年は共に過ごす奴がいたことを思い出した。
夕食ぐらい豪華にしてみるかと考えて買い物に行くことに決定。

「買い物に行くから、着替えて来て」
「おう」
すっかり慣れた現代の服を纏った彼を連れて家を出た。


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「…ランサー」
「なんだ?」
「あれ、欲しいの?」
私はランサーが見つめていた先にあったものを指差して尋ねてみると、彼は何も言わずに視線を私の指差す方へと戻した。
指差した先―釣竿を先程から飽きることなく見つめ続けていたということは少しは欲しいと思っていたのだろう。

「買ってあげようか?」
「!!!」
クリスマスだしたまにはプレゼントとかもいいかななんて思いながらふと聞いてみたら、彼は勢い良くこちらを振り返り目を見開いた。
私が思っていたよりも彼はそれが欲しかったらしい。

「……いいのか?」

さも意外だと言わんばかりの顔でこちらを伺ってくる。
まあ、確かに普段から無駄なものは買わず出費を最小限に抑えているけども。

「欲しいならプレゼントしようと思ったのに」
せっかくの厚意を疑うなんて紳士じゃない。なんてぶつぶつぼやきながらそう言ってやったら彼は一瞬目を見開いてから嬉しそうに「欲しい」と言った。

そんな彼に不覚にもどきりとした。そんな顔見せられたら駄目なんて言えなくなる。(言うつもりもないが)
わかってやっているのだろうかこのサーヴァントは。

「あ、でもお金が」
「無いのか?」

悔しかったので一言遊んでみたら一気に沈んだ声色に変わる。
私の一言一言に微妙にだがテンションが上下する彼が可愛くて犬のようだと思ってしまった。

「嘘嘘、大丈夫。知ってるでしょ?私が普段どれだけ賢くやりくりしてるのか。釣竿一本くらい余裕だよ」

立ち止まったランサーを促す様に店に向かって歩き出す。


「葵、ありがとな」

名前を呼ばれ振り返ると、大きな手が私の頭にのせられた。

たまにはこんなクリスマスだって有りだろう。

 

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