君と僕が紡ぐ恋物語
□鬼祓う巫女
1ページ/48ページ
昔々、鬼と人が混同する時代。鬼と人は共存することはなく、鬼は人を食い荒らし人は鬼を祓っていた。そんないざこざが続き、鬼と人は互いの一族滅亡を望み、領土を統一し我が物とせんする、そんな戦乱の世。
予言の刻と呼ばれた月夜の晩。紅き鬼と、退魔の男は己の運命が如くぶつかり合う――
「まずは、貴様からだ――!」
刀から、覇気から肌を通して伝わる黒く長き髪を束ねた男の覇気。金色の瞳を持った男――鬼は禍々しさを増す男の覇気に顔をしかめる。
覇気の禍々しさは鬼と同等、最早それ以上――!
ガキン!と鬼の刀が寸前のところで男の刀を捕える。
この俺が、人間に圧されるだと……?
「面白い。お前の―――、何処まで強くなるか見定めてやる」
鬼の邪気が一層に強くなり、周りの重力を打ち消す。足元の土や石が覇気によって浮遊した。
人知を越えた闘いに、巫女である女は手を出せずにただ見守る。
空に浮かぶ月は、雲に隠れている。予言の刻まであと少し――
――――
予言の刻より約十七年前。
年老いた優しき老夫婦は、一人の幼子を胸に抱いた。
それは桃から産まれた男児。鬼ヶ島にいる鬼を退治する、『伝承の子』
桃太郎――