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□もしも〇〇が××だったら
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≪もしも達海が25歳で後藤が22歳だったら≫
若ゴトタツ+村越




『この人と一緒にプレーしたい』

 それがETUを選んだ理由だった。
 彼のプレーはまるで羽根が生えているかのように軽やかで、鮮やかで。目を奪われ、心を奪われた。選手としては決して大きな体格とは言えないけれど、その背中は誰よりも大きく頼もしかった。
 同じピッチに立って、彼と同じモノが見えたらどんなに楽しいだろう。
 想像するだけで心が躍った。入団が決まったその日から、同じユニフォームを着るのをどれほど楽しみにしていた事か。
 それなのに。
 ようやく選手との顔合わせの瞬間がやってきたというのに、通されたその部屋の中に、待ち望んだ彼の姿は無かった。

「おい、達海はどうした?」

「後藤が起こしに行ってまーす」

「また寝坊か……あれほど寝坊するなって言ったのに」

 はぁ、と自分達を案内してきたスタッフが大きな溜息を吐くが、選手達の顔には『達海だから仕方がない』と言いたげな笑顔が浮かんでいる。
 ETUの広報誌を見ても、雑誌のインタビュー記事を読んでも、達海猛という選手は時間にルーズでプライベートは『適当』らしい事は知っていたが、こんな時まで適当を発揮するとは思わなかった。

「……言いましたよね?」

「えー、だっけ? 覚えてなーい」

「分かったって頷いたじゃないですか」

「んー?」

 開け放たれたドアの向こうから、待ちわびた達海の声が聞こえてきた。

「悪ぃ、後藤が起こしてくんないから寝坊しちゃった」

「えっ、俺のせい?」

 あはー、と悪びれた様子もなく、頭を掻きながら部屋に入ってきたETUの7番――達海猛に、村越の胸は高鳴る。
 ようやく同じチームの一員になったのだという実感が湧いてきて、思わず唇を噛んだ。

「お。見ろよ、後藤。今年はデカいヤツいんぞ」

 連れ立って入って来た、同じ練習着を着た男を振り返って、達海がニヤリと笑う。
 ほら、と指を指されて驚いた村越は、達海に後藤と呼ばれた男と目が合った。軽く会釈をしてきた彼に、村越も会釈して返す。

「油断してっと、レギュラーの座取られっかんな」

「なんで真顔で俺に言うんですか」

「お前が一番甘い」

「それ、理由になってます?」

(後藤……レギュラーでいたか?)

 漫才を披露しているかの様な掛け合いから、二人はそう浅くない月日を過ごしているのだろうが、後藤と言う名前に心当たりがない。
 達海と同じくレギュラーとして試合に出ているのなら、その顔を見れば分かりそうなのに、村越の記憶の中からは見つけられない。

「いいから早く席に着け。これから自己紹介してもらうからな」

 スタッフに背中を押され、二人が空いている席に座ると、簡単な説明の後、一人ずつ自己紹介が始まった。




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