GIANT KILLING

□ご褒美を頂戴(椿視点Ver.)
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「椿、監督見つかったか?」

「えっ?! いえっ、あ、えっと、そのっ」

走ってバスに乗り込んだ椿は、世良に声を掛けられ、なんて答えて良いのか分からず、右へ左へ目を泳がせながら思わずジーノの姿を探していた。
いつものように一番後ろの席で、お気に入りのクッションに背を預けて読書している、彼の長い足が見えた。

椿の視線に気付いたのか「フフ」と笑うジーノの声に、更に椿は言葉を詰まらせる。

「ええ〜っと…」

「どうした、椿?」

落ち着きなくキョロキョロし出した椿に、近くに座っていたチームメイト達が注目した。
ますます居た堪れなくなって、後退る椿の背中に、とん、と何かがぶつかった。

「椿〜、お前何やってんの? 座るなら早く座れよー」

通路に立ってられると、俺が座れないんだけど?

いつの間にバスに乗り込んで来たのか、達海が椿の背中を押していた。
ん、と唇を突き出して、いつものように不機嫌な表情をしているが、そこに先程の情事の場面を重ねてしまって、かあぁっと椿の顔が赤く染まる。

「うわあああぁぁぁっ!」

「うっせんだよっ! 椿テメエッ!」

思わず大音量で叫んでしまった椿に、黒田が立ち上がって怒鳴る。
至近距離でマトモにくらってしまった達海は、両耳に指を突っ込んで「アーアー」と耳の聴こえを確認してる。

「すっ、すいませんっ!」

「なんだよ、お前」

「挙動不審だな。まぁ、いつもの事だけど」

「すっ、すいませんっ!」

何度も周りに謝る椿の頭にポフッと達海が手を置いて、

「いいから座れよ。もうじき出発するぞ」

とん、と椿の肩を押した。
何事もなかったように席についた達海を見て、若干ふらつきながら、椿も席に崩れ落ちるように座った。
試合よりもどっと疲れた気がする。

「何処に行ってたんですか? 探したんですよ〜」

「ん〜…ちょーっと、ね。火遊びしてたから消して来た…みたいな?」

あんにゃろ…覚えとけってんだ。

窓の外を眺めて呟いた達海の言葉は、松原には聞こえなかったようで、「はぁ…」と腑に落ちない返事をする。

そんな達海と松原の会話が耳に入って来て、椿は頭を抱えて深い溜息を吐いた。

「どうしたんだよ? 椿。ゴール決めた試合だってのに、えらい落ち込みようだな」

隣の席の清川に声を掛けられても、椿の肩は深く落とされたままで。

「…キヨさん、なんか俺、ぶっ続けで何試合も出たみたいに…疲れました…」



その日、椿は初めて、スタミナ切れを経験したらしい。




END.

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もしも椿が目撃していたら…って妄想から書いてみました。
パニックになること間違いない!
ジーノに「主人のモノに手を出すな」って言わせたかっただけ…とも言う。

お読み頂き、ありがとうございました!

2010/11/16
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