GIANT KILLING

□ご褒美を頂戴
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−−その結果がこれだ。

ジーノは今日の試合で2アシスト1得点。
3−1でETUの勝利。

相変わらず、夏木や椿にダメ出ししたり、集中切らしたりしてたけど、まぁ、一番の活躍はしたから褒めてやろうと思ってたら。
後半ロスタイム。
人を指差して「ご褒美」って言ってたのが、唇の動きで分かった。

……すっかり忘れてたけど。

さぁ、バスに乗って帰るぞって時に、達海はジーノに捕まった。
連れて来られたのは、すっかり人気の無くなった、関係者以外立入禁止の、スタジアムに続く階段下。

カーブした廊下から死角のその場所で。
壁に追いやられ。
ムカつく位の笑顔で告げられたご褒美の内容は…


「タッツミーのキスが欲しい」




***




何を好き好んで、こんな所で男とキスしなきゃいけないんだ。
でも。
何を言っても、ジーノは引かない気がする。
……たかがキスだ。

「ご褒美なんだから、タッツミーからしてよね」

鼻先が触れる位の距離で、ジーノが目を閉じた。
なんだこいつ、随分と睫毛が長いなぁ…なんて思わず観察してたら、「まだ〜?」って催促された。

ただキスするのも癪に障って、達海はぐいっとジーノの後頭部に手を回して、ぶつけるように唇を重ねた。
勢いを付けすぎて歯がぶつかったが、気にしない。

ぐっと唇を押し付けて離れると、ジーノは苦笑いした。

「ロマンチックじゃないねぇ」

「当たり前だろ? そんなのは女とやれよ」

もういいだろ、と肩を押すと、ジーノの左手が伸びて来て達海の顎を捕らえた。

「チームの勝利にも貢献したんだから、そのご褒美も欲しいな」

「あ? あのなぁ…なんだ−−んっ」

一瞬の隙を突いて。
ジーノの唇が達海の抗議の言葉を遮った。
先程のような、子供じみたキスじゃなくて、深いキスで。

三十五年も生きてれば、それなりに経験も積んで来てるのに。

ジーノのキスに−−翻弄される。

絡む舌が気持ち良い。
歯列を、上顎をなぞられ、背筋をぞくりと快感が走る。

「ぁ……ふ……んっ」

角度を変える度にジーノに唇を舐められ、思わず開いたそこに何度も舌が侵入する。

気付けば、肩を押していた手はジーノのジャケットを掴み。
まるで催促するかのように、自分からも舌を絡めていた。

マズイ…と頭の隅で警鐘が鳴る。
溺れて、しまいそうだ…
九つも年下の。しかも男に。

流し込まれる唾液が唇の端から零れて、思わず達海はコクリと喉を鳴らして飲み込んだ。

「……はっ……」

漸く唇が離れると、「はは」と満足げにジーノが笑う。

「いいね、その顔。そそられる」

「……っ、うるせ」

唾液で濡れた達海の唇を、ジーノの舌が舐め取る。
その感触までも甘く痺れるようで、ビクッと肩が震えた。

「癖になりそうだよ、タッツミー」

潤んだ瞳で見上げてくる達海の頬を両手で包み込んで、ジーノはもう一度、色付いた唇にキスをした。
触れるだけの、優しいキス。

「次のご褒美も、楽しみにしてるよ」

耳元で囁かれ、達海はギュッと目を閉じた。

ジーノの気配が離れ、コツコツと足音が遠ざかると、達海はズルズルと壁伝いに座り込んだ。
唇に手を当て頭を抱える。

マズイ。
なんだこれ。
ジーノのキスに感じてるって、なんだよ…
男だぞ、あいつはっ!

「…なんなんだよ、俺…」

唇には、まだジーノの柔らかな唇の感触が生々しく残っている。
柄にもなく顔が熱くなるのを感じて、達海はますます頭を抱えた。

遠くの方で、有里が自分を探している声が聞こえたが、達海はその場を動けなかった。

動揺し過ぎて、まだ誰にも顔を合わせられる状態に無かった。




 《そして彼に溺れていく》




END.


−−−−−−−−−−−−−

初書きです。
タッツミーが好きです。
ジーノが好きです。
タッツミーは皆に愛されれば良いよ!


2010/11/12
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