GIANT KILLING
□I'm so Happy.
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「タッツミー」
耳に届く声は、余りにも優しくて。
不覚にも、涙が出そうになった。
ジーノの手が優しく達海の頬を包み込んで、キスを幾度も落としてくる。
額に。瞼に。
鼻先を掠めて、そっと唇にも。
愛しさに溢れた優しいキスに、達海が震える声でジーノの名を小さく囁いた。
「どうしたの? らしくないね」
ふふ、と笑うジーノの気配に、達海はぎゅっとしがみついて大きくひとつ、深呼吸をした。
背中を撫でるジーノの手が、ひどく優しい。
見透かされてるような態度が、普段は腹立たしかったりするのに、今だけは。
それがとても心地好い。
「ねえ、タッツミー」
顔を上げると、サイドテーブルに置かれた淡いライトの光が、ジーノの端正な顔を引き立てるように照らし出していた。
「ボクに、どうして欲しい?」
見惚れてしまう程の微笑みを向けられて、嬉しくて、胸が苦しい。
ああ、どうしよう。
−−好き過ぎて怖いなんて、言えない。
「……何も、しなくていい」
「本当に?」
瞳を覗き込まれて、目を逸らしたいのを我慢して見つめ返す。
けど。きっと。
ジーノの事だから。
気付いたかも知れない。
「こんな時だけ、いつも通りなんだから」
そう言いながら、達海の首筋に指を滑らせ、ぐいっと引き寄せた。
「−−ん、くっ」
先程までの優しいキスとは違って、強引に唇を割って、深く深く、唾液を流し込まれながら舌が差し入れられる。
苦しくなって、両手でジーノの胸を押してもびくともしない。
「んん…っ、ぅ、ふ…」
苦しいのに、体は反応してしまって。
熱を帯びていくのが分かる。
「……体は素直なのに、ね」
キスの合間に囁かれ、抗議しようとすれば唇を塞がれる。
抗議の声は、甘い吐息に変わって零れ落ちた。
「……ぁ、はぁ」
肩で息をして、そっとジーノを盗み見たら。
悲しげな表情を浮かべていて、胸がズキンと痛んだ。
「−−どうして不安そうな顔してるの? ボクには言えない事?」
「……あ」
違う。
そうじゃない。
そんな顔をさせたいワケじゃない。
頭を横に振れば、「話して」と優しく促される。
少し迷って、のろのろと口を開く。
「……怖いんだよ」
「何が?」
「お前の事……好き過ぎて、怖い……」
思いがけない達海の告白に、ジーノが目をパチパチと何度も瞬きした。
(好き過ぎて、怖い−−?)
「……お前の事ばっか、気になって……考えて……」
俯いた達海が、両手を膝の上でぎゅっと握った。
「……お前がいないと……生きていけないんじゃないかって……怖い」
ずっとひとりで生きてきたのに。
これからも、そうだったはずなのに。
いつからこんなに、弱くなってしまったんだろう。
隣にいて欲しくて。
抱きしめていて欲しくて。
でも。
こんなにジーノに依存してしまったら。
いなくなってしまったら。
自分がどうなってしまうのか、分からなくて−−怖い。
「タッツミー」
ジーノの手が、握り締められた達海の手を取って、解しながら指を絡めてきた。
持ち上げて、指に口づける。
「ボクはもう、君がいないと生きていけないんだよ」
「……ジーノ」
「お互いに、お互いがいなきゃ生きていけないなら、ずっと一緒にいればいいじゃない」
ね? と微笑むジーノが愛しくて、絡めた指に力を込めた。
「けど……俺は男だし、オッサンだし……」
ジーノに言い寄る女達は多い。
若くてキレイで一途な女でも現れたら、捨てられるのは自分だ。
「何度も言ってるよね?」
肩を掴まれ、あっと思った時にはベッドに押し倒されていた。
ベッドのスプリングが軋む。
「タッツミーじゃなきゃダメなんだよ。ボクは君がいればそれで良いんだ」
「……ジーノ」
ふふ、と含み笑いを浮かべたジーノが覆い被さって来る。
「分からせてあげる」
唇が重なる。
ゆっくりと何度も、柔らかさを確かめるように啄まれ。
伝わる熱に、胸が熱い。
「−−愛してるよ、タッツミー」
絡まる視線は、確かに同じ想いを繋いでいて。
溢れた涙で、愛しいジーノの顔が滲んでしまう。
零れ落ちた涙を、ジーノの唇がリップ音を立てながら拭っていく。
「ん、ちょっ……くすぐったい」
ジーノの唇が目尻から耳へと移動して、耳朶を食んだと思ったらベロリと舐められた。
「嫌いじゃないでしょ」
耳元で甘い吐息と共に囁かれて、ピクッと達海の体が反応する。
ああ、もちろん。
ジーノから与えられるモノは、全て愛しいんだから。
「ジーノ」
両腕をジーノの首に巻き付けて、ぎゅうっと抱きしめた。
「痛いんだけど」っていう抗議の言葉は、敢えて無視する。
「俺も……愛してる」
だから。
お前しか見えないから。
「お前の全部、俺によこせ」
命令口調に肩を震わせてジーノが笑う。
それでこそ、達海だ。
「いいけど。全部、受け止めきれるかい?」
ボクの想いは空より広くて、海より深いんだよ?
ニヒ、と笑って達海はジーノにキスを贈る。
「当たり前だろ? 俺を誰だと思ってるんだよ?」
王子を相手に出来るのは、王様だけだ。
「じゃあ、ボクにもタッツミーの全部をちょうだい?」
欲を孕んだジーノの笑みは、艶っぽくて目眩がする。
こんなに愛されてるなんて−−
「満足させてくれたら考えてやるよ」
「ふふ。ボクよりワガママなんだから」
ゆっくりと目を閉じて、唇に触れる熱を。
全身でジーノの熱を感じながら。
押し寄せる想いの波に身を委ねた。
END.
−−−−−−−−−−−−−−
甘々な二人を書きたかったのに、甘い雰囲気は何処へ……?
でも『甘い』と言い張る!
ベタベタしてる二人も大好きです。
2011/3/21