GIANT KILLING
□Jealousy
1ページ/1ページ
.
掴まれた手首が痛い。
もう少し、手加減っつーか、年上を労る気遣いを持って欲しいな。
こっちはイイ歳したおっさんなんだから。
ギシ、と二人分の体重を乗せたベットが軋んだ。
「なんなんスか?」
不機嫌な顔した赤崎が達海を見下ろす。
「それ、俺のセリフじゃない?」
突然部屋に入って来て、人の事を押し倒してるお前はなんなんだよ。
頭の向こうで、見ていたDVDから前半終了のホイッスルが聞こえた。
半分も見れたかどうだか分からない。
頭を動かして、位置的に見えないけどテレビを見る素振りをして、達海は「あ〜ぁ…」と声を上げた。
「お前のせいで、また最初から見なきゃなんないじゃん」
「達海さんが悪いんスよ」
「なんで俺?」
横顔に突き刺さる、赤崎の視線。
機嫌が悪いらしい。
なんかしたっけ?
横を向いたまま考えてみるが、何も思い当たらない。
今日の罰ゲーム…も、うまく回避してんだよなぁ、こいつ。
「う〜ん…」
「何唸ってんスか?」
頬に手を添えられたかと思ったら、ぐいっと正面に戻された。
意外と近くに赤崎の顔。
「赤崎くん、こわ〜い」
真顔でおどけた口調で言ってやったら、眉間のシワが深くなった。
うん。やっぱ怖いよ、その顔。
「ふざけないで下さい」
「だってさ−、お前が機嫌悪い理由、わかんねーもん」
自由になった左手で、赤崎の眉間に触れる。
少しだけ、表情が柔らかくなった。
そのまま、赤崎はゆっくりと達海に覆い被さって、肩に額を押し付けた。
「はあぁ」と吐き出された溜息が、なんだかくすぐったい。
「−−練習ん時、」
そのままの格好で話始めた赤崎の髪に手を伸ばして、達海は指に絡ませたり摘んだりする。
見た目よりも柔らかいその髪を触るのが達海は好きだ。
「後藤さんとベタベタし過ぎっスよ、あんた」
「…後藤?」
なんかあったっけ?
譫言のように「後藤…後藤…」と考え始めた達海に、赤崎はまた溜息をひとつ。
「付き合い長いから、仲良いのは分かってんスけど」
「……あ」
後藤に用事があって声を掛けたのに、気付かずにクラブハウスに向かったから、後ろから抱きついてやったんだっけ。
調子に乗って「俺の事愛してるなら無視すんな」って、頬擦りもしてやったなぁ…
あ、そっか。
「嫉妬してんだ?」
「まさか」
顔を上げた赤崎の眉間には、まだシワが寄ってる。
「あんたが無自覚すぎるんだよ」
「気にしてるって事は、嫉妬してんじゃん」
ニヒヒ、て笑ってやったら、眉間のシワが深くなったけど、ほんのり耳が赤く染まった。
なんか、可愛いな。
「……人付き合いとかまで口出ししたくないスけど、見えるとこでして欲しくないっつーか」
外方を向く赤崎が可愛くて、達海は両腕を回して引き寄せた。
額をくっつけて笑みを浮かべる。
「俺、やっぱお前のこと好きだ」
「…いきなり何スか」
愛の告白してやったのに、赤崎の表情は相変わらずしかめっ面。
貴重なんだぞー。
もっと有り難がれー。
唇を尖らせて不満を表したら、赤崎の唇が落ちて来た。
優しく、触れるだけのキス。
「……達海さん、好きだ」
目を開けると、滅多に拝めない穏やかに微笑む赤崎がいた。
こういう顔を見れるのは自分だけだ。
もっと見たいし、独り占めしたい。
ゆっくりと目を閉じれば、近付く唇。
重なると直ぐさま抉じ開けられ、舌が奥深くまで侵入してくる。
「…んっ……ぅ……」
性急な動きに付いて行けなくて苦しくなる。
いつも思うけど、赤崎はがっつき過ぎだ。
求められるのは嫌じゃないけど、こっちは赤崎ほどスタミナがあるわけでも無いし、なにより若くない。
たまに。
その熱さと若さに嫉妬する。
気持ちが、置いて行かれそうになって、泣きたくなる時がある。
イイ大人、なのに、さ。
「…は……ぁ……」
離れたお互いの唇を銀糸が繋ぐ。
ペロリ、と唇を舐めて、赤崎が頬を緩ませて達海を見つめた。
「達海さん。俺、止まんないスよ?」
一応、疑問形だけど、答えはいつも同じだから宣言に近い。
ニヒと笑みを浮かべて、挑発するように見つめ返す。
「お手並み拝見?」
貪るようなキスに酔いしれる。
こうして、お前の愛を感じられるなら、嫉妬させるのもたまにはいいな。
流しっ放しのDVDから聞こえる歓声が、とても遠くに聞こえた。
END.
−−−−−−−−−−−−−
実は一番好きなCP。
なのに、好き過ぎて書きづらいという悲しい現実orz
お互いに好き過ぎて不安になる…みたいな関係だといいな、という願望。
2010/11/24