□失くしもの
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去りゆく君の裾を 咄嗟に引っ張り止めた日
どうしたの と問う声を 俯きながら聞いていた

掴んだシャツの白さに
目が眩んで唇を噛んだ

あの時 飲み込んだ言葉を
今の僕は覚えていますか?
例え 失くしていたって
かつて 確かに持っていたんだ


いつしか この両手で繋ぎたいものはなくなり
右から左に流す 「効率」だけが目についた

幼い自分のことを
笑いながら 涙を堪えた

あの時 飲み込んだ言葉は
自ら望み 捨ててしまった
それが 間違いなのかと
気付いても もう 影もなかった


幼い自分のことを
今の僕は 覚えていますか?

あの時 大切だったもの
好きなもの 苦手だったものも
例え 失くしていたって
カコから叫ぶ 声が聞こえる

あの時 飲み込んだ言葉を
思い出すから 笑って欲しい
「何か」を想うキモチは
今も 確かに持っているんだ


失くしもの



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