長編

□第11話
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気が済むまで武器の手入れをして、その武器を使ってマルコさんと手合わせをしてコテンパンにされてから、ホワイトランまで徒歩で移動。そこから馬車でマルカルスへ行き、明け方だったがそのまま出発した。

結局、たいして休んでいないけれど、気は晴れている。
マルカルスから街道に沿って東へ進む道中は、何事もなかった。


「さて、場所的には向こうです」
「向こうって、橋はねぇのかよい」


地図的には真東の位置に目的地があるはずだった。
問題があるとすればは、間に多少流れの早い川があること。


「橋?こういう時、だいたい泳いで渡ってたからさ」


見渡す限り、ソレらしいものはない。
マルカルス周辺はそれほど寒くないので、川の向こう岸へは泳いで渡る事が多かった。
そのため、私はここらへんの橋の場所などは把握していない。

街道を通るのだって、マルコさんと旅するようになってからだ。
まっすぐ行けば早いだろって、だいたいの方角を定めてまっすぐ進んで山だって登る。
帝国兵とか変な魔術師に出会う確立が、がくんと下がるっていう理由はあったけど。

だから、橋を探して半日歩くようなことになるくらいなら、私は黙って川を泳ぐ。

この川だって、川幅がそれほどないので渡れると判断している。
流されたら少し下流まで行ってしまうけど、おぼれる事はないだろう。


「マルコさんは飛べばいいよ。誰も見てないし」
「鈴は泳ぐのかい?」
「ん?深かったら。ここら辺なら川底歩けそうだから」


迷うことなく、ざぶざぶと川へ入っていく。
やれやれとマルコさんは青い炎を揺らしながらふわっと向こう岸に着地した。


「思ったんだけどよい。俺が運べば濡れなかったんじゃねぇか?」
「な!…しまった。次の選択肢に入れておく」


濡れた装備などを軽く拭き、目的地であるカーススパイヤー方向へ山を登って行くと、ドラゴンがいた。


「あそこ、フォースウォーンの野営地がある」
「なら、あのドラゴンはフォースウォーンってやつらと戦ってんのか」


ドラゴンに向かって魔法の氷が飛んでいき、ドラゴンの口からは炎が吐かれている。
矢も飛んでいるが、ドラゴンはたいして気にしていない様子だ。


「橋を探して進んでたら、彼らの野営地を通って川を渡ることになってたねい」


野営地は、先ほど渡った川の下流にあった。
ならず者と言われているフォースウォーン。
彼らが縄張りとしている地に踏み込めば戦闘になる。

戦ってもいいが、目的は別にあるし、“先客”の相手で忙しい。


「あそこ。見える?洞窟の入り口。こっそり近づいて入ろう」
「了解」


ドラゴンを倒すのに加勢したところで、フォースウォーンは感謝どころか縄張りへの侵入に対して怒り、攻撃してくる。
黙って通り過ぎる方が得策というやつだ。

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