□無双の狩人
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【01】

集会所へ運び込まれた私は、身体に異常はないものの、精神的にぐったりとして動けなかった。


「アン、3オツすんのはえーなぁ」


眩しいくらいの爽やかな笑顔で、人のことを馬鹿にしてくれてんのはエース。
そばかすがチャームポイントのやんちゃ君って、聞いてる。

今日、初めて会ったんだ。


「蛙退治に行こうって、アレ蛙じゃないし、化け物だし」
「でっかいだけだろ?あれに苦労してるようじゃ、ハンター向いてないぞ?」
「待って。初めての狩りって、まずレクチャーからでしょう!?」
「んなもん、慣れだって。人生甘くないんだぜ?」
「なんか違う!絶対違う!!」


平穏で平凡で退屈な村にいた私は、たまに村にやってくる行商のオヤジさんから聞く昔話の虜だった。

自分の体の何倍も大きな竜と対峙し、飛んでくる火の玉を避け、翼を破壊し、背中に飛び乗り叩き落しと、何度聞いても、胸が高鳴り、とてもワクワクしたものだ。

いつか村を出て、ハンターになりたい。
大きくなるに連れて育っていった私の夢。

そういうことなら息子を紹介してやろうと連れてきてもらったのがバルバレだった。
集会所の周辺に自然とできた市場で、移動する事もあるため地図には載っていない。
今の時期は、腕自慢祭りのため大砂漠近くに位置しているらしい。

ここにはベテランから初心者まで様々なハンターが集まり、拠点にしているハンターも少なくない。
行商のオヤジさんの息子さんも、今はここが拠点らしい。

オヤジさんが紹介してくれる息子さん、つまり先輩ハンターさんが、初心者である私にいろいろ教えてくれることになっている。
先輩ハンターさんは今狩りに出ているようで、先輩ハンターさんを待つ間、仕事でバルバレを離れるオヤジさんの代わりに、オヤジさんが息子のように可愛がっているエース君が一緒にいてくれることになった。

話し相手としてだったのだけれど、それはエースにとっては退屈だった。
気付けば、簡単に倒せるからさという彼の口車に乗って狩りへ出かけていた。

いくら簡単で初心者向けの相手だとしても、武器の扱いも分からない私には、倒せるはずもない。
おかげで、クエストの受け方と失敗した時の帰り方だけは分かった。


「もー、やだぁ。オヤジさんが言ってたマルコって人か、サッチって人を待つー!」
「えー!……お?」


突然、大きな鐘の音が鳴り響いた。


「ななななに?!」
「なにって、でっけぇのがこっち向かってんだよ」


エースに連れられ外に出ると、大砂漠の遠くの方に砂煙が見え徐々に近づいてきている。


「見てみろよ」


渡された双眼鏡で見てみると、何か巨大なものが砂の中を泳ぎながらこちらに向かってきていた。
砂の上を走る船がソイツの周りを走り、どうやら攻撃をしていた。


「あそこで、マルコ達が戦ってんだよ」


チームで狩りに行けるのは4人まで。
人数オーバーでジャンケンに負けたエースは今回留守番をしていたらしい。


「まっすぐこっちに向かってるけど、大丈夫なの?!」


このままでは市場にぶつかる!私達だってつぶされる!という不安からエースにしがみついた私だったけれど、そんな心配をしているのは私だけだった。


「マルコ達だぜ?倒せないんじゃなくて、遊んでんだろ。あー、やっぱ俺も行きたかったなー!!」
「ねぇねぇ、エース」
「ん?」
「私もああいうの倒せるようになるかな?」
「おお、すぐすぐ!」


双眼鏡越しにベテランの彼らの戦いを見ながら、オヤジさんの話を思い出して、私はこれからの生活を思うと胸がドキドキした。

 

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