他
□他
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女は陸で暮らす。家を守りながら、子供を産み、育て、夫の帰りを待つ。
女とは、そういうもの。少なくとも私の生まれ育った島では。
古い考えだ。それが嫌で島を捨てて飛び出してきたのに、今になって、私はいつか船を降りて陸で暮らすんだろうと感じている。
だからか、私は陸に上がる度に恋をしていたた。
それはもう、馬鹿みたいに。
元気だせよ。次があるさ。お前はいい女に育つ。気にするな、女は胸じゃない。顔は悪くはないよ。自慢の妹だ。
たくさんの兄が、口々に励ましてくれた。
本当は放っておいて欲しかったけど。
海賊の女と添い遂げようという男には、なかなか巡り合わない。
簡単にヤれる女とでも思っているのか、一晩だけのってやつならいくらでも出会う。
そういう輩ではなく、この人だ!と勝手に感じた運命に翻弄されて、ひとり傷つく。
今日は星空が綺麗な夜だ。
それを肴に、私は船の先端に座り込み、貰ったお酒を飲んでいる。瓶に直接口をつけて飲むようなお酒ではないけれど、やけ酒なんだからいいだろう。
「あーあぁ」
瓶を片手に大の字に寝転がると、青い炎を揺らめかせながら、トンッと小さな音を立てて船に降り立ったマルコに見下ろされた。
「またやけ酒かよい」
「恒例行事ですーぅ」
ムスッとして答えれば、よっこらしょなんて若くないこと口走りながら、マルコは私から瓶を奪って横に座った。
「馬鹿だねぃ、本気になるなんて」
何でもお見通しなのだろう。
マルコは天下の白ひげ海賊団の、1番隊隊長様だからな。
「いつだって本気だよ」
「知ってるよい。…なぁ、陸の男じゃ物足りないんだろい?」
ニヤリと笑うマルコは、見透かされてるようで腹が立つ。
今日は島でいい雰囲気になった。
私は今日、船を降りるのかもとトキめいた。
そこへやってきた他の海賊団。
愛を語り合ってたカフェを破壊している。
私が運命を感じた相手は、なんとも情けない悲鳴をあげて腰を抜かしていた。
カフェにいた人間もまとめて助けてやれば、海賊めと罵られての失恋。
助けたのに!!
嫌われ者の海賊なのだから仕方ないと肩を落として船へ帰れば、兄たちからは笑われ、褒められ、慰められた。
戦った海賊団は、弱かった。
でも、いいとこ見せたくなるじゃない?
本気で相手してやって、見ていた全員にドン引きされた。
私だって白ひげ海賊団。
雑魚じゃ相手にならないのだ。
「アンの相手は陸の男じゃ無理だよい」
「もー、うるさいよ。じゃあどうしろってのよ」
ごろんとうつ伏せになって、足をバタバタと動かす。こんな事やっても気は晴れない。
「手頃な俺は?」
ぐびりと酒を飲んでたマルコが唇を舐めながら提案してきた。
それ知ってる。
他の島で上玉なお姉さんを落とした時にやってたやつだ。
「本気で口説かれてから考える」
【結局は貴方の思い通り】
「そうかよい」
「うん」
二人、並んで眺めていた星空に流れ星が一筋流れた。
「明日から覚悟しろよい」
title by 空をとぶ5つの方法