短編

□Ace
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※学パロです。
【特別じゃないって言い聞かせてみても、幸せな気持ち消せはしない】 続編

「いらっしゃいませー!」


いつものように、喫茶店「みかんと風車」でアルバイト。
笑顔で入り口に向かって挨拶をしたら、バンっ!っと大きな音を立てて扉が閉まる。


「ちょっと、どういうことよ!説明しなさい!」


鬼の形相のナミちゃんがいた。
あまりの形相に店にいたお客さんまでビビッてしまって、店長のノジコさんが奥で話しなさいと苦笑いをしてた。

ナミちゃんは私を引きずるように店の奥にある階段を上がっていった。
二階はノジコ店長とナミちゃんの家だったりする。


「で?なんでプレゼント渡してないの。」


まだまだ恐ろしい顔のナミちゃん。
たぶんエースか、弟のルフィ君に会ってマフラーの話をしたのかもしれない。

いずれ話さないといけないし、観念して、私は話し始めた。





終業式の日。
午前中で学校は終わる。

私もエースも、帰宅部だ。

クリスマスはちょうど休日で、学校もなければ会う約束もしていない。
だってお互いバイトがあるし。

だから、今日渡さなければ意味がない。


わかってはいる。

でも、いきなり二人きりになんてなれない。


『エース、ちょといい?』とか『話があるんだけど。』とか言えばいいのだろうか。

無理。

だってエースは目立つから、そんなこと言おうものなら、私まで注目の的だ。


そもそも何て言って渡せばいいのか。


『あなた、ずいぶんと面白い顔になってるわよ。』


朝からずっと同じことを、あれこれ考えている。
今もずっと考えていたら、ふふっとロビンちゃんに笑われてしまった。


『だって…。』

『ほら、彼が来たわよ?』


教室の入り口を見れば、帰り支度をしたエースが入ってくるところだった。


『なまえ、もう帰るぞー?』


だいたいいつもエースと友達と帰っていて、だから今日も、エースが迎えにきた。


『うん。じゃあ、ロビンちゃんまたね!』


昇降口まで行くと、いつもはいる他のメンバーはいなくて、今日はどうやらエースと二人きりらしい。


これはいわゆる絶好のチャンス。

私は、かなりドキドキしながら靴に履き替えた。



それから、いつものコースをエースと並んで帰った。





ただ、いつもと違い、二人ともずっと無言だった。

それに、ものすごく速い早歩きで、気づけば、いつもの別れ道まで来ていた。


『じゃあ、俺こっちだから。』
『うん。』
『またな。』
『またね。』


そして、せっかくロビンちゃんにもナミちゃんにも応援してもらったのに、何の進展もないしプレゼントも渡せないまま、今日に至る。




「と、いうわけです。」


一部始終、ナミちゃんに話した。
おっそろしくて、目が見れない。


「はあ?あんた何考えてんの!」

「だって、頭が真っ白になっちゃって…。やっぱり私には早かったんだよ。」


すっかり呆れているみたいだけど、鬼の形相ではなくなって、いつものナミちゃんだ。

ちょっとだけ、私はホッとした。


「もう、しょうがないわね。」



プレゼント渡せなかったけれど、喜んでもらえなかったり、告白してフラれるより、現状維持がいいんだよ。
そうやって自分に言い聞かせる。




【今はまだ、このままで】




「それで?マフラーはどうするの?あ、売ろうと思えば売れると思うけど、声かけてみようか?」

いたずらっぽく笑うナミちゃんに、私はマフラーは自分で使うつもりと苦笑いをした。




title by 確かに恋だった


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