短編

□Ace
7ページ/11ページ


※学パロです。


エースと私は幼馴染で、家が隣。
小さい頃から、だいたいいつも一緒にいる。

今、エースは、"あー"とか"うー"とか、変な声を出しながら宿題をしている。
私は、とっくの昔に終わっていて、ソファに座って宿題しているエースの横で、カーペットに座ってテレビゲームをしている。

エースの宿題がどこまで進んだのか見ると、私も苦労した問題で、ガシガシと頭をかきながら、あーでもないこーでもないと書いては消していた。


「教えてあげようか?」


すでに終わった余裕から、ふふんと勝ち誇ったように声をかければ、いらねぇ!と乱暴な声が返ってきた。


「…それよりさ。バレンタインは、やっぱアレだけ?」
「うん。」


昔からイベントごとに興味がない私。
ついこの前からエースに言われて付き合うことになったけど、例年通り今年もチョコレートなんてものは用意しなかった。

その代わり、放課後に、とても役に立つものをプレゼントしてあげた。


大きい大きい紙袋。


毎年、持ち帰るのに苦労しているのを知っているから、用意してあげたんだ。


「すっげぇ助かる!って喜んでたじゃん。」


一応、ハッピーバレンタインデーという言葉とともに、プレゼントしてみた。
その後、エースの家に帰って、今日みたいに宿題やって、ご飯食べて、ゲームしたりして遊んで、そろそろ自分の家に帰るって時間になる頃には、チョコなしに気づいたのかすっかり不機嫌になってたけど。


「そりゃぁ、あん時は助かったからさぁ…。」


もごもごと何か言いたそうなエース。


「世の中の女子みたいに、全員がチョコ用意すると思うのが間違いよ。」


毎年言っているセリフ。これを言うと、エースは黙る。

ただし、今日は口を尖らせている。


「やめてよ、拗ねてるの?」


ちらっとこっちを見て、すぐに宿題に視線を戻すエース。

幼馴染から恋人になったから、少しは期待していたのかな。
でも、買ってないし、買うつもりもない。
持ちきれないくらい貰ってるんだから、いいじゃないか。

今後のためにも釘をさしておこう。


「わかってるだろうけど、私、これからも、バレンタインデーとかクリスマスとかのイベントに積極的に参加はしないよ?」


彼は、むすっとした顔で、宿題をにらんだまま。


「わかってる。それがなまえだもんな。」


心に残った残念な気持ちは消えないまま、私を尊重しようとして、もやもやしているのかな。
なんでもちょっと我慢しちゃうお兄ちゃん気質。

あ、これって、そのうち、俺だけが好きなんじゃないかとか、妙な喧嘩に発展するフラグなんだろうか。
そんなことないしなー。

しょうがない。ちょっと照れくさいけれど。
と、心の中で言い訳をして。


「チョコはあげないけど、私の初めてをあげよう。」


私は膝立ちになって、エースの胸倉をつかんで、そのままびっくりしているエースの唇を奪って、パッとつかんでた服を離して、ゲームに戻った。




【そのまま受け取れ!】



「おかわりしたい。」
「無理。」



title by 空をとぶ5つの方法


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ