短編

□Thatch
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【怒られてるッチ】


うちの会社は、社会人らしからぬ髪型の人が多い。
その中でも特に目についたのは、馬鹿みたいなサイズの時代遅れな髪型。
一瞬フランスパンかと思った。

社内でも有名なその人は、見かける度に怒鳴られていた。

私が新入社員の頃から彼のいる部署の前を通る度に怒鳴られていたから、情けない人と思っていたけれど、部署を異動してきてから分かったことがあって、考えが変わった。

「ったく、遊びじゃねェんだ。先方にも迷惑かけて、どうするつもりだよい」

平時よりも低いマルコ部長の声が響く。
マルコ部長のデスクの前にはサッチ課長と新入社員のエースくん。
エースくんが何かやらかしたらしく、深々と頭を下げている。

「同じミスが起こらないように何か工夫する」
「先方にはこれから謝罪に行ってくる。あと俺っちも一緒に考えるから、な?」
「……頼むよい。」

サッチ課長はマルコ部長によく怒鳴られてるけど、サッチ課長が何かしたわけではない。
同僚に言われて分かったのだけど、サッチ課長が一人で怒鳴られてる姿は見たことがない。
いつだってサッチ課長より下の立場の誰かと一緒だ。

「誰だって失敗から学ぶだろ?俺やマルコだって、すっげぇ失敗してんだ。会社傾けるレベルでな?だから、あんまり怒るなよ、なんてことは損失とか立場とか、あいつの性格考えると言えねぇからよ」

なんて言って笑って、課長とかの立場に関係なく一緒に怒られてくれた。
その後のフォローも完璧で、ほんと、その時は素敵だなと思ったけれど。

「ったく。ちょっと休憩してくるよい」

眼鏡を外して、ネクタイを緩めながらため息をつくマルコ部長を前にしたら、サッチ課長への想いは恋にはならなかった。


title by ginger


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