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□本日は炎天下につき
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川辺で待ち合わせとの事になった時から嫌な予感はしていた。そもそも、先に着いてしまったのも問題だ。
ジリジリと肌が焼けていく感覚とつうつうと伝う汗が時折川を通して冷えた風に解されていく。
その心地良さに一瞬目をつむったのが良くなかった。
背中に重い衝撃、反転する視界。つまり突き落とされた。
『…いきなりなにすんだ。』
濡れた髪を掻き分けて見上げた先に、この炎天下に憎たらしい程涼しげな顔を引っ提げた待ち人の姿。
『いや、暑そうだと思って。』
奴の厚い唇の端がきゅっと上がる。
『たまに…いや常突拍子無いよなお前。』
立ち上がれば、たっぷりと水を吸った服が重い。
『水もしたたるなんとやらってやつだな。』
『阿呆か。』
ふと、奴の首筋を伝う汗の雫が目に入った。
そう。存外にこいつも人並みなのだ。それはなんとなく喜ばしい様な気持ちをくらくらとする脳髄に満たしていく。
『お前の前だけでだよ。私が阿呆なのは。』
成る程、お前も俺も暑さにやられちまってるわけだ。というわけで、少しばかし頭を冷やそうか。
引き上げる意志で差し出してきた手を強く握って勢い良く後方へ振り回す。飛び散る飛沫は太陽に反射してまるでギャマンのかけらの様だった。
本日は炎天下につき
いい年こいた大の男が二人で川遊びきゃっきゃうふふ
end.