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□フォルテシモってなぁに
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尾浜とは中坊からのダチだけど、部屋に来るのは意外な事に始めてだった。




『ポケモンシール貼ってあるじゃん。』


最初に目についたのは、意外と広い部屋の窓に貼らられてある日に焼けて黄色がだいぶ抜けたピカチュウ。

『うん、小学校の時のだわ。』

『お前、小学校ん時から自分の部屋あったわけ?良いよなあ。俺、高校受験の時にやっと部屋貰えたし。』

部屋は窓のシールの黄色を除けば全て青っぽい灰色に統一されていて、普段派手な服を着てる癖にシンプルな感じだった。勉強をする部屋って感じがした。俺の部屋とかは未だに母親のクローゼットがあったり、親父の本棚があったりだし。

『はち、コーヒー?紅茶?』

『コーラ』


あったっけとかぶつぶつ言いながら尾浜が出て行き階段を下りる音が遠ざかっていく。

本棚を物色してみると、参考書が半分、小説が半分。漫画はゼロ、さすが成績優秀。エロ本は…本棚に入れる筈はないか。

本棚から目線を外すとすぐ横の壁に、大きな机みたいなものがあった。
蓋がついていて、手をかけてそっと開けると、中に白と黒の半端な縞模様。ピアノだ。

ピアノなんて久しぶりに見た。

鍵盤を指で押してみる。何故か音が出ない。
首を傾げていると背後の扉ががちゃりと開いた。

『…はち、それ、電子ピアノだから。スイッチ入れんと音出ないよ。』

『かんちゃん、ピアノ弾くのか?』


頭の中では『尾浜』。口に出せば『かんちゃん』ってなる。なんとなく、なんとなく。

『うん。』

『ええ。すげえじゃん。何で今まで言わなかったんだよ。』

尾浜がピアノの下に手を入れてスイッチを入れる。鍵盤を人差し押せば、ぽーんと音が出た。ぽーん、ぽーんと尾浜も鍵盤にを押す。

『いやあ。俺、勉強できんじゃん。』

『うん。』

『スポーツ万能じゃん。』

『…うん。』

『おまけに音楽できるなんて言えば完璧すぎて怨まれちゃうじゃん。』

『…どっから突っ込めば良い?』

『というのは冗談で、単に昔から個人的にやってるだけだし、わざわざ言うもんでもないかなーって。なーんとなく、言ってないだけだよ。』

ぽーん、ぽーんとピアノの音。

『ピアノ好き?』

『割とね。』

『ピアニストとか目指してるん?』

『んー。別に。儲からなさそうだし。』

『現実的だな。』

ピアノの鍵盤に置かれた尾浜の指はなんだがいつもより少し長く、伸び伸びとしている様に見える。


『かんちゃん、なんか弾いてよ。』

『オッケ。何が良い?』

『…モーツァルト』

『今、適当に言ったな。』

けらけらと笑いながら、尾浜は指をしゅっと構えて、ポロンポロンと鍵盤を弾き鳴らし始める。
当然のこと、それは俺の知らない曲だ。

『なんて曲?』

『すみれ。』

『へー。』

『ゲーテの歌唱劇のやつ』

『ほー。』

当然のこと、尾浜の説明の意味は良く分かってない。だけど、それは耳に心地良いい音だった。ピアノというよりも尾浜から音が出てるみたいだ。

弾き終わった尾浜に拍手をすると、ピアニストも悪くないね。と冗談っぽく笑った。



尾浜の持ってきた飲み物は見た目的にコーラかと思えばアイスコーヒーで、見た目は似てるじゃんとちびちび飲む尾浜から、俺はずっとその柔らかい音が聞こえていた。




フォルテシモってなぁに






それってなんかのサナギなんじゃない?←
ピアノ弾けるかんちゃんとか萌えると思ったけどあまり表されてない。
end.






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