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□背中合わせの距離
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長次

ほんの戯れに一年生の宿題と知っていながら朝顔の観察を始めたら嵌まってしまった。

植物は静かで文句の一つも言わないが、与えられた分の水と光と栄養の分だけの答えを出す。

単純である。

そこが素晴らしいと思う。

やがて咲いた青紫の花は私が最近見た一番鮮やかな色で、そしてそれは更新されることはない。



小平太

今日もバレーボールを六つ壊して、壁は四つ破壊した。は組の用具委員長にすまないと言えば馬鹿と返されて、私は少し反省する。

でもね、でもね。
今日も目に映るものは皆うずうずとしていて、私のなかにもそのうずうずが入り込んできて、私の心の臓や筋肉が暴れろ暴れろって言い出すんだ。

そうなるともう反省は終わり。今日の反省は十五秒。

きっとまた怒られてしまうんだろうね。



六ろ

七松小平太と中在家長次は対照的な二人である。

七松は体力があるが年相応の落ち着きや配慮と言ったものが欠けており、一方、中在家も体力はあるが人付き合いの悪さや自主性の薄さといった問題があった。

お互いを足して二で割ればいいのに、と周りの人々は彼等をそう評したが、二人はお互いを混じり合わせることもなくどこまでも対照的であった。

七松が騒げば騒ぐほど中在家は静かになり、
中在家が部屋で静かに本を読んでいれば七松は外で壁を破壊する。


ただ、七松の暴走をあっさり止めれるのが中在家の聞こえづらい小声であり、中在家が一人の時は常に七松が側にいるから中在家はしばらく孤独というものを知らないでいる。

それが二人の間での不思議であった。





背中合わせの距離




六ろの日!
end.


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