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□青空パーマネント
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庭に広げた新聞紙の上に喜八郎が座る。


『先輩、暑いです。』

『我慢しろ。』


見上げて来る喜八郎の髪はくるんくるんに伸びて、まるでボブヘアー。

髪を切れと言っても生返事で、先日、教室に遊びに来た彼を見た竹谷の阿呆が女子だと勘違いして、俺は土日に美容院に引っ張っていこうと思っていたら、『先輩が切ってください』と言う。『斎藤に頼めよ。』と彼と同じ学年の美容院の息子の名前を出したが、俺が良いだんと、俺に切って貰うまで髪は切らないと言って聞かないから仕方なく土曜日の午前中、つまり今、この状況なわけで。



『さて、本日はどのようになさいますか。』


鋏をチャキチャキ鳴らしながら美容院のまね事。
面倒だと口では言っていた半面、楽しんでいる俺である。


『格好よくしてください。』

『それは難しいですね。』


髪をひとふさ引っ張って、チャキンと切る。


『動くなよ。』


と言えば喜八郎はこくこく頷く。だから、動くなよってば。

ふわふわとウェーブのかかった天然パーマは引っ張って切るとまたくるりと丸くなって、落ちた毛もまたくるりとなる。
自分で言うのもあれだがわりかし器用な俺は結構夢中になって、無言で切っていく。喜八郎は口を阿呆みたいに半開きにして庭の木を眺めていた。色素の薄い細い髪だった。

幾分か時間が経ち、もう良いかなと手を止めると、喜八郎はボブヘアーからショートカットになった。それも、ちょっと短め。
なんだか年より幼く見えるなと思いつつ鏡を見せてやると、喜八郎は首を捻ったり眉を寄せたりして、『下手くそ』と一言。


『うるせー。料金とるぞ。』

『冗談でーす。』



喜八郎は俺の手から鋏を取り上げる。


『お礼に先輩も切ってあげましょうか?』


チャキチャキと鋏の音。


『遠慮しとく。』

『えー。』


不満げな声を出しながら俺の首筋に猫みたいに頭を擦り付けてきた。
短くなった髪の毛がちくちくと痒かったけどやらせておいた。落ちた髪の毛が風に飛んでいく。土曜日の午前中だった。






青空パーマネント


end.


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