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□15時になりました
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長食満
長次がカステラを食べている。
俺は嗚呼、と思う。
それ、と唇だけ動かせば長次は福富の妹から頂いた、と。
嗚呼。ああ。
一切れくれと長次の返事を待たずに口にひとつほうり込む。
甘い。あまい。
とてもとても甘いから長次の茶を勝手にとって流しこんで、そうして残りの二切れも口にほうり込んだ。
嗚呼。甘い。
雑伏
昔はあまり甘い菓子を好まなかったのだけど、この子に逢いに行く様になってから、大抵片手には団子やら饅頭やらの土産を持っている。
また、それを食べるこの子が可愛らしいやら微笑ましいやらで、菓子より甘いのは私かもしれないと、そんなことは前から自覚してるのだけれど。
『君は、甘いものが好きだねえ。』
『そうでもないですよお。』
私のなかで何かが、がらがらと崩れていく。
と、次の瞬間、胡麻餡をまぶした団子を一口食べながら君が一言。
『こなもんさんが持ってきてくれるから好きなんです。』
嗚呼。君も私もなんて甘いんだろうね!
鉢綾・学パロ
先輩、なんかちょうだい、と、廊下で出会い頭につき出された土だらけの手にチョコクッキーをひとつ置いてやる。
喜八郎はそれをまじまじと見つめて、
『僕、チョコあんまり好きじゃないんですけど。』
と、言いながらパクリ。
『ありがとございましたー。』
と、ぺたんぺたんと俺を通りすぎて再び廊下を歩いていく。
靴ぐらいちゃんと履けよと声をかけたら、はあい、と気のない返事が返ってきた。
ぺたんぺたんと足音が遠ざかる。
後日教室に来た喜八郎にお礼ですと渡されたのはハッカ飴。
『俺あんま好きじゃないんだよね』
って言いながら口に入れた。
15時になりました
おやつタイム
end.