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□電波塔が見えるかい
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どんな風に表すべきか分からないけれどこの気持ちに一番相応しいと思えた『好きだよ』という掃いて捨てる程に在り来りな四つの音の固まりを、君はこれ以上価値のあるものはないというような喜び様で受け止めて、『私も』とまた四つの音の固まりを返してくる。

仕方がない。だって僕も君も国語の点数は今ひとつ、いや君に至っては今ふたつ。
投げるほうも受け取るほうも下手なもんだから、ただ、まったくもって受け取ってないわけではない(つもりになっている)のが救いかもしれない。

君の髪から緑と土の臭いがして僕の心の臓だか胃の腑だかがきゅうきゅうと痛む。『好き』と言えば痛みが減るので(なくなりはしないけど)何度も呟けば、君は嬉しそうに、世界一の幸せものみたいな顔をして僕の頭をぐしゃぐしゃに撫でながらぎゅうぎゅうと僕を抱きしめる。

こうして心の臓と心の臓を合わせれば僕の心はもっとちゃんと伝わりそうで、むしろ心の臓を移すことができそうで、まあ、できないんだけど、だから少し苦しかったけど我慢していた。


世界一の幸せものの幸せは中途半端な僕でできている。


電波塔が見えるかい



伊作視点
end.


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