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□用法用量をお守り下さい
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猪名寺乱太郎が馬鹿につける薬の調合に成功したらしい。
阿呆か、だったらそれはお前がつけろと思う反面、この三年の歳月で奴の調合技術はとうに俺を追い抜かした事も事実だった。
『いったい、何を混ぜたんだ。』
奴は昔から変わらない阿呆な笑い方を付けて少し得意げに話し出す。
『破れた夢と、失った恋と、消えた希望と、変わらない現実。』
奴は急須を持ち上げようとしたが、熱かったらしく、手をぱっと放し自身の耳たぶに持っていく。
『それから偽善への気付きと、悪への疑い、見え透いた未来。』
『酷い薬だな。』
『凄く苦いですよ。』
『飲み薬なのか。』
『目が覚めるくらい苦い薬です。』
にっこりと笑って差し出された茶はなんだかいつもより苦かった。
用法用量をお守り下さい
毒を盛られる左近。見ように寄っては乱→さこっぽい
end.