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□宇宙ステーション
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ある夜、父と喧嘩をした虎若は家から飛び出して夢中で走りつづけてそれから当然のように迷子になった。
ぐすぐすとべそをかく虎若は川辺りに座っている。
彼の目前に流れる川は不思議にきらきらと輝いていた。
ふと、虎若はその川に手を突っ込む。
川は冷たくなく、ふつふつと青い光りが沸き上がった。
綺麗だなあ、と虎若は鼻を啜りながら思う。
若太夫。
低い声が背後から聞こえる。その独特な呼び方に虎若はぱっと振り返った。
『照星さん。いつから。』
『先程からいたさ。やっと追いついた。』
腹が空いただろう。食べると良い。と星空を背に立つ彼の人が懐から綺麗な赤色の果実を一つ取り出した。
『林檎、と言うのだ。』
林檎の皮を小刀でくるくると剥くと中は輝くようにうっすらと黄金がかった様な白だ。
しゃくと虎若は口に含む。みずみずしく甘い果実だった。
『さあ、帰ろう。』
歩きはじめた照星に慌てて着いていこうと虎若が立ち上がる。
虎、虎。
また、己を呼ぶ声に我に帰れば父が自分の肩を掴み、必死の形相で見下ろしていた。
『嗚呼。良かった。まったく肝が冷える思いであったぞ。川に飛び込むなど。』
助かって良かった。父は虎若の背中をがっしりと抱く。自身の身体はぐっしょりと濡れていた。
『照星さんは。』
虎若の問いに父ははっとした顔を一瞬したが、それは固い笑顔に変わり、大丈夫だ。今は帰ろうとだけ小さく呟いた。
宇宙ステーション
照星さんがカムパネルラ。