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□夜半の黒い獣達の噺
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彼の人、八味地黄丸はまるで飢えた卑しい蜥蜴の様な男でありました。白い肌と目鼻立ちは女人の様な印象を与えますが、品性に欠ける雰囲気を纏うのは貧相な髭とお歯黒の為だけではないと思われます。肌は白くとも、その腹の内はその歯列と目の縁のごとく真っ黒けなのでありましょう。
その黒は、当然ながら人としては愛されるものでは無く(事実、彼の内実を知れば十人中十人は蛇蝎のごとく嫌悪するのですが)、しかし、闇に生きるには調度良い黒なのでした。彼の人の眼は白目がぬらぬらと青白く光ります。私はその目を見る度に彼の人に飢えた蜥蜴を見るのです。
それはどす黒くとも強い、それ故に強い、卑しくも純粋無垢な生き物でした。八味地黄丸は闇の中の獣でその形を手探りで見つけ出す度に私は眩しい程に救われる気持ちになるのであります。


三黄丸に八味について語って貰いました。




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