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□花咲く日に
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昔、首吊りを見た事がある。

父の任務に連れていかれた時(それは諜報活動であった為に子連れなら怪しまれないだろうということだった筈だ)、その帰りだか、父を待っていたか、

記憶が曖昧だが、それは桜だったのをしっかり覚えている。

始めは誰かが木に手をかけて遊んでいるのかと思った。

満開の花の枝々の間から白い脚がぶら下がっていた。
そこから目線をあげているとふっくらとした胸があり、そこから上にはまた白い女の顔があった。

風に舞い上がる真っ黒な髪と、半開きの紫の唇から僅かに覗く舌は赤く、縄が食い込んだ首は口唇よりも深い紫。

伏せた目の睫毛の長さに目が釘付けになる。美しい女だった。
そっと触れた脚は飛び上がる程冷たかった。

そう、美しい女だった。

そう、こんな感じで、

常持ち歩いている流星錐の縄を奴の首にかける。

眠っている奴の睫毛はあの女よりも長くて黒い。
舞い散る花びらが光りにちらちらと反射して目が痛かった。


それはきさまのはつこいか


幻聴だ。
固く閉じた奴の口唇はあの女と違い柔らかい赤色である。

『始まりはてめえだ。』

乾いてささくれた俺の唇をそっと重ねればひんやりと冷たい手が肩に回ってきた。

『起きてたか。』

『お陰で首吊りの夢を見た。』

少し、笑った。


花咲く日に



ちょっとヤンデレ気味な凄腕
end.

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