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□私が誰よりいちばん
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彼女が男に恋をして、その恋を失うのを見るのは通算十回を超えて、おそらく十何回目かの恋の始まりを打ち明けられた時は、良かったねという言葉が放課後の教室に酷く虚しく響いて少しヒヤリとした。

彼女はそんなことはお構い無しに、クスクスと、十何人目かの運命の相手のその素晴らしさをあげていく。

私は彼女のばら色の頬の向こうに数ヶ月前のこの世の終わりの様な泣き顔を透視したけれども、それはきっとそのまま数ヶ月後の彼女の姿の様な気がしてならない。

彼女は少女としては聡明で快活で加えてとてもとても愛らしかったけれども、女としては典型的な馬鹿だった。


『私もトモミちゃんみたいな脚が良いな。』


唐突に自分の名前が出たので少し肩が揺れた。
向かい側に椅子をこちらに向けて座った彼女が、自身脚を伸ばして私のそれにぺたぺたと当てる。

『細くって真っすぐで格好良いの。』

少し短すぎやしないかと思う彼女のスカートから出ている脚は白くて少し肉感的だ。

『良いのよ。ユキちゃん、男の人はユキちゃんみたいな脚が好きだわ。』

私の脚は黒くて枝の様だ。

『そうかしら。』

ふわふわと笑う彼女は抱きしめたくなるほど可愛らしかった。
私が男ならば、の話だ。

『あ。』

と彼女が不意にグラウンドに目をやる。

『またこけてる。』

何を言っているのか理解できなかったが、彼女の視線を追えばよたよたと起き上がるひょろひょろとした色素の薄い背中をやっと見つけた。

ぶちまけた教科書と大きな平たい鞄を拾い集める彼を見て彼女は顔をちょっとしかめる。

『あの大きな鞄はなんだろう。』

『画板よ、トモミちゃん。』


私の呟きに間髪入れず答えた彼女を思わず見る。その横顔を、彼女はグラウンドから視線を外さない。
わたわたと鈍臭さを丸出しに荷物をかき集める彼にクラスメートらしき少女が近付いて拾うのを手伝いだした時、彼女はまたさらに顔をしかめた。


『行きましょう、トモミちゃん。』

ついでにアイツを笑ってやりましょう。

と、彼女はちょっと意地の悪い笑顔を残して教室を出ていく。


彼女は本当に愛らしくて馬鹿だ。

私が誰よりいちばん





少女漫画を地で行く乱←ユキと冷めまくってるトモミちゃんのユキ←トモ
end.






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