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□キスもハグもいらないの
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その背中は確かに助けてと叫んでいたように思う。



随分と派手にやったねえ。

と間延びした声が響くのは死屍累々たる焼け野原でつい数刻前に法螺貝の一鳴りで終結した戦場。


あら、あれなんてまだ若い。


痩せた長い指が、雑兵の死体を示す。仰向けに倒れているその顔は確かに少年と言っても良いような年に見えた。あの子に似ているよと穏やかに笑う。


本当、毎度毎度、飽きない奴らだと思わないか。ねえ、高坂。


いきなり声を掛けられて肩が震えた。そして返事ができなかった。



顔を上げて背中を見る。助けて、がまた聞こえた。




高坂。



振り向かないで、振り向いては駄目だ。そうしたらきっと貴方の『助けて』を聞かなかったふりをしてしまうのに、






帰ろうか。


こちらを向いて笑う顔はいつもと変わらず、唯一で、強くあるその人で、だから『助けて』は聞かなかったふりをするしかないのだ。


『はい、組頭。』



強いままでいて欲しいのに、結局は聞こえないふりをするというのに、私は、ごくたまに、この人の『助けて』を期待しているのだった。






キスもハグもいらないの



『あの子』は諸泉でも伊作でも良い。たまに弱る雑渡さんに気づいているけど踏み込めないチキンボーイ高坂とか。
end.


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