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□チョコレートコスモス
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それは花としてはあまりにもその色彩は地味でいて、しかしなおかつ花の形と可憐さを失なっていない不思議な一輪だった。

それは彼奴の胸の中心から心の臓に少し寄った位置からすっと生えている。

俺しか見えない、妄想の花。花は彼奴の痩せた胸の上下運動に合わせてさわさわと揺れた。





アナタヲオモッテサイタノデス





幻聴である。
彼奴のひび割れた白い唇からは生臭い息が微かにひゅぅひゅうと聴こえるだけである。


さわさわ、さわさわ、花が揺れる。

なんともその様は疎ましく、揺れる茎の根本から毟り取ってやろうと思う。思うだけで指は動かない。


その花は、花の癖に本当に地味で暗い色彩で、だのに花として美しくて、きっと明日には枯れるのだ。


チョコレートコスモス
花言葉は『恋の終わり』

end.


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