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□予定調和の夜
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『強くなった、なあ、平太。』
彼の笑顔は夜目にも妙に鮮やかで眩しくて俺は眉を潜めた。
『へいた』、俺の名の響きは少し間が抜けていてそれがずっと好きになれない。
『…けまとめさぶろう。』
口の中で呟いた彼の名の響きは綺麗で、それがずっと羨ましかった。
暗闇の中でも、くっきり鮮やかな輪郭の彼、
『けまとめさぶろう』は、まるで、神様だ。
俺に、罰を与えに来た、
俺を、救いに来た、
俺の輪郭が出鱈目で曖昧になっていくほど、きっと彼の輪郭は美しく整っていく。
足元の血と肉の塊を彼は軽やかに飛び越えた。
それが合図。
俺は重い腕を再び持ち上げて構える。
昔、俺と彼が似ていると言われた気がしたが、それを嬉しく思った気がしたが、きっとそれは俺の妄想に過ぎなかったんだ。
彼と俺は今も昔も交わることのない平行線の上に立っている。
『好きでした。』
それは愛の告白などではなく贖罪だった。神様はまた綺麗に笑った。
予定調和の夜
どっちかっつと食満に死亡フラグ
end.