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□お待たせマイハニー!
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『ねえ、私の部下来たでしょ。先生。』
突然の出現に驚く事もないとこは流石、忍者を育てる教師と言うべきか。
『いや、今日はまだ来てませんね。』
腹を摩りながらにこりと笑う彼はなかなか綺麗な顔立ちをしている。
『今日は、ね。』
きっとそれは言ってる間に『今日も』に変わるのかな。と僅か頭上の天井裏の気配に思いを馳せる。
『腹が痛いの?』
先ほどから彼はずっと腹を摩り、摩り、机の上のテスト用紙に丸を付けていっている、いや、バツを付けていっているのが正しいか。
『これ、50点満点のテストだったのかな?』
『いいえ、100点のです。』
引き攣っていても人好きのする笑顔だなあ、と思う。
『うちの部下がいつも迷惑かけてごめんね。』
『いえ、まあ。』
答案にバツを付ける手を休めない彼もきっと天井裏に潜む存在感には気づいている。
『でも、素直で、真っ直ぐないい子ですよね。』
かたりと小さな物音。
あの阿呆の子ってばもう。と苦笑が漏れた。
『鼠だね。』
『鼠ですね。』
じゃあ、邪魔したね。と彼の部屋を後にした。
後ろからついて来る気配。振り返れば耳まで真っ赤な阿呆で可愛い鼠。
『行ってきなさいよ。』
『今日は良いです。』
『今日は』は『明日は』になるのだろうね。
青春、青春。若いってのは良いもんだ。
お待たせマイハニー!
見ように寄れば雑→諸
end.